19日予備選、両党のネバダ州と共和党のサウスキャロライナ州をの結果を反芻しておもうこと、ポストホック(事後)の感想です。
●オバマ頭うち
ネバダの予備選にヒラリーとオバマは総力を結集、バクチでなしにラスベガスにこれほどお金が落ちた事はなかったんじゃない。やはりヒラリーvsオバマの接戦が予想されどちらも落とせないことから激戦地になったからだろう。ネバダの投票数が前回の1.5倍くらいに伸びた。オバマは敗れたものの代議員数獲得で勝ったことと、次のSCは有利と見られているためか、意気消沈していない。だが作戦の反省と見直しはあるだろう。
オバマがあの辺の最大労組、ホテル・レストラン業界の労組から支持を取り付けて、それで気を抜いたわけではないが、労組幹部の推薦はいまどき馬の耳に念仏であることが証明された。60年代までなら前英炭坑労組、全米自動車労組、我が国でも総評なが国政に介入する力を持っていたが……。ホテル・飲食業界は経営者、従業員ともに出入りが繁く組織化が難しい。林立するラスベガスのカジノホテルは大企業であるが、従業員の労組があったことにビックりしたくらい。マカオやソウルでは組合があるのだろうか、ふと疑問。
ヒスパニック(州人口の14%)とアジア系はヒラリーに、黒人はオバマに投じた。オバマが多用する標語『ひとつのアメリカ』は演説会場ほど実際にはウケていないことが判明した。血の繋がりは職場の繋がりより強し、真相はとても陳腐なのでした。また、ネバダ労組の要求を蹴った経歴をもつR・リーガンをオバマが賞賛したのは失敗だったと言われる。が、どの程度の票数に影響したのかよくわからない。余談ですが、TVをみているとある集会に運ばれた投票箱にVOTE HEREの文字と漢字で「投票箱」と併記されていた。中国語でもそういうのかしら、日系が多いとはおもわないが。
●貴重な連勝、ヒラリー
この勝敗もあいかわらずライブで観賞したのですが最終結果まであっけなく早かった。ヒラリーの経験が、オバマの希望と変革を凌駕したと評されますが、わたしにはよくわからん。政策だって大差ない。移民政策のちがいは南部と異なりネバダ辺りでは切実な問題ではない。特に女性票とラスベガスがあるカウンティー(郡)で強かった。ともかくここでヒラリーが負けていたら、予備選3勝一敗から2勝2敗、代議員得票数に大差が出るところだった。これで五分五分ですね。でS・カロライナは何とも言えないが、支援チームに勢いが出る。
● 走り続けるエドワーズ
この人はとっくに戦線落ちなのにラリーをいい加減にせず、どうして性懲りもなく憑いてゆくのでしょう。歯を食いしばって遅れまいとするマラソン選手のようでないのが救い。根っからの選挙好きと批判されとも平気なツラの皮は政治家の美徳です。将来に備えているのかも。マケインは71才ですから、エドワーズはまだ何度でも挑戦できる若さである。ただ、この人の話はブッシュと他候補の批判が多くて、ひかれ者の小唄ではないがプラスイメージに欠けます。
共和党は小票田のネバダでロムニーと争うのを避け、みなさん棄権したためロムニーが独走、なんのことはないモルモン票がなくても勝てた。というわけロムニーは確実に3番におちる同日のS.キャロライナを棄権。感想なし。
● Mac isn Back! Mac is Back!
サウスキャロラナ(SC)共和党予備選は接戦が最後まで続き、最終結果が遅くなったがたいへん面白かかった。翌日は日曜を理由に当地の時間で朝の4時まで重にCNNのライブを見る。解説を聞いていると知らない事ばかり、マケインとハッカビーの支持者はベルト状に郡のかたまりになっているんですね。開票に連れて残りの郡がどうなるか、正確に予測していました。
SCはマケインが、2000年の予備選でブッシュに惜敗した州である。勝利が決まって党集会のスピーチで、NHと同じMac is Backの連呼に迎えられた。『サンキュー、サンキュー、しばらくぶり、8年だもんね諸君』なんて。なお、マっクとは ジョン・マケインのことでジョニーよりBack(返り咲き)と語呂合わせで使われます。今回の勝利演説は原稿を用意せず、簡潔に、マケイン節に鳥肌立てる人でも気にならないほどでした。
マケインは8年前ここで煮え湯を飲まされてから少しはヒネクレたとおもう。ヒネクレて孤高の哲人に大成した、と独断しているのですが。しかし哲人とて支持者の温もりにほだされる人間にかわりない。勝つほどにいい顔になってきました。ところでわたしはいつも家内に抑えられているせいでしょうか、奥さんのことが気になるクセがあって、マケインのケースはま、2度目の夫人は美人と相場はきまっているから頓着しませんが、バービードールのようなあのシンディー夫人はどんな人なのでしょう。控えめであるが、内助の功も見えないお人形のようだぞ。でもマケインの資産はこの裕福な夫人から出ている。また、大口寄付支持者にエスター・ロウデー(米最大の化粧品会社)の会長エヴェリ・ロウデーという美人がいらっしゃる。哲人は美人で金持ちを愛す世知に長けた一面をもつ。あやかりたいですな。
● I LIKE MIKE! I LIKE MIKE!
これは接戦の末敗れたマイク・ハッカビーの標語である。マケインを軍事保守とすればハッカビーは社会保守、ロムニーは経済保守となる。エバンジェリカル(福音派)は日本でも大きくわけて5つぐらいの派に別れ、独立した活動を行う。アメリカもそうだが、国教を定めていないので所属する教会信者の献金に頼る部分が多く、創価学会のような指揮系統はない。
ハッカビーは負けをいち早く認めて、支持者への第一声が『いまジョン・マケインにお祝いの電話をしてきました』とはじめた。戦いはこれからだとスピーチは盛り上がっていましたが、ラリーの活動家たちはガックリしますよね。ハッカビーやロムニーは宗教を背景にしているが宗教を政治に持ち込むと懸念するのは誤りで、正真正銘のクェーカー教徒であったニクソンは過激な神聖政治をもたらしましたか?共和党候補の多くが同性の婚姻や中絶に反対しているのは理念であり、宗教と絡めるべきではなかろう。北欧は福音ルーター派を国教と定めているが、ホモの牧師が認められており、同居しておられる。中絶や避妊手術は国立病院でタダでしてくれますな。
そんなことより、共和党の候補者はがみなさん非常に紳士的で、いまのところはですが互いに罵りあう徴候はない。この先、フロリダから参加するジュリアーニを加えて上記4人は、それぞれ大統領の資格十分しかも品位がある。今ではイラクが予備選の重要ポイントではなくなったが、民主党のイラク政策をよしとしないわたしは、4人とも落としたくないな、もったいないとおもう。
たいして意味がありませんが19日の集計がおわったところで代議員獲得数は:
民主党: オバマ38、クリントン36、エドワーズ18、クシニック1
共和党; ロムニー66、マケイン38、ハッカビー26、トンプソン8、ジュリアーニ1
次は26日、民主党のサウスキャロライナ予備選です。(了)