● 続・ローブのオバマ批判、ほぼ全文を私訳
Why Hillary Won / By Karl Rove『なぜヒラリーが勝ったか』
3)ヒラリーがそれとなく指摘したように「実務経験のない新米上院議員が大統領の任に適するだろうか」というオバマへの疑問がある。
前大統領のクリントンはイラク問題に対するオバマの意見には一貫性がないと痛い所を突いた。ほかにも裏付ける強い材料がある。オバマは上院の議題に一つとして指導力を出せなかった。イリノイ州議員時代は主要議題、たとえば妊娠中絶の権利や銃器規制法案といった民主党活動グループが推進する法案提出などに対して、習慣的にこれを避けていた。オバマには虚位の発言、ものごとを誇張する性癖があり、答えられない問いには払いのけてやり過ごそうとする。
新しい積極的な政治スタイルを語り、自己の発言に忠実たらんとする人々からみれば、オバマの政治スタイルは旧態依然であり、言うことと成すことことが一致しない。オバマがこれらの批判をかわす事は容易ではないだろう。とはいえクリントン陣営がこれらオバマ批判に成功するためにはメッセージとキャンペーンをベターにする必要がある。オバマが書いた小学校時代の作文(I want be a President)を持ち出してもはじまらない。
4)クリントンが一昨夜NHで勝利した4番目にして最大の理由は、オバマが民主党支持者にヒラリーへの深い疑心を抱かせる事が出来たものの、争点に終止符をうつ事は出来なかったことである。オバマは歴史的役割を演ずる人物像であるが、それでもって前ファーストレディーでNY選出上院議員のヒラリーを押しやるわけにはいかない。彼女もまた歴史的人物なのである。ヒラリーに反駁するときのオバマはビタミン不足のアドレー・スチーブンスを思い出してしまう。雄弁で時に感動的なレトリックは殆どが空気のように軽い。
アイオワでのジェファーソン=ジャクソン記念日晩餐会の席上、オバマはクリントンに意図的な4つの強打を放ったときにオバマは自分の声を見つけたといえよう。この席上、民主党支持者にブッシュ大統領よりずっと以前からこびりついたウミ、年々言い続けてきた問題に立ち向かおうと呼びかけた。
オバマはクリントンスタイルのキャンペーンと組織のやり方を『ピラミッド型にして、世論調査を重視する………そうはいかないよ』と退けた。ヒラリーのイラク見解を攻撃、拷問について、シリアおよびイランと直接トップ会談を拒否したことを攻撃した。ついでヒラリーの新政権を拒否して『来年、もしくは次の4年間も同じ争点、1990年代の続きを論争して過ごしたくない』。この言い方は、ヒラリー政府が民主党退潮をもたらし党の大義が反映されないのでは、と危惧する民主党支持者を巧みに誘導する。
しかしこの対称性と変革のメッセージを構築・先鋭化するより、むしろオバマは舞い上がるレトリックと熱狂するラリーを選んだ。オバマのスピーチは根っからの支持者を活性化したが、ニューハンプシャーではクリントンを懸念して他の候補探していた民主党支持者の心を満たさず支えにならなかった。
またオバマは本来ヒラリーとおなじように打算的である。たとえばアイオワとNHの投票日ナイトスピーチに際し、民主・共和両候補のなかでオバマ一人だけがテレプロンプター(原稿表示モニター)を利用した。そのため他の候補がメモをたよりにまた予稿の暗記によってスピーチの達成力がおちるのに比べ、明確さとクオリティーに優れる。オバマは磨き上げた演説を得たものの、しかし(視聴者)とのコネクションを失った。
民主党の各候補は互いに嫌い合ってNHをあとにした。特にヒラリーは感情を表に出した。勝利演説でヒラリーは投票を争った候補者たちに言及するときオバマを最後にした。デニス・クチニックの後だ、ヒッデー!
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ここからカール・ローブのコメントは2月5日のスーパー火曜日にむかって予想を展開します。理由を省いて要約する:15日のミシガンはクリントン。19日のネバダは敗退。26日のサウスカロライナはおそらくオバマが勝利。ということでフロリダの29日が正念場(どっちとも言わない)、スーパー火曜日の23州にどんでん返しの影響を与えると書いています。(肩すかし)
23州を飛び回るお金もエネルギーもないのでフロリダのあと、少ない予算で効果的なTVキャンペーンの拠点はどこがいいかについて助言。
メンフィス:2月5日の投票州である西部テネシーから東部アーカンサスをカバー。ファルゴ:ノースダコタとミネソタをリーチ。
なお、下線と(カッコ)内は筆者の書き入れです。(了)