安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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パキスタン「国盗り物語」
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〈 2008年 1月 8日 火曜日 )


ブット家はパキスタンでも最大の地主、封建領主、即ち大名の家系である。地元シンド州には領主の館、インド風白い宮殿が肥沃な高地平野の真ん中にポッカリかがやいている。他国では城にあたるが、環濠がなく戦争になればひとたまりもないような立地と建築はインドと共通した所があり、イスラム寺院のように無防備である。ここに処刑された父ズルフィカール・アリ・ブット首相とベナジール・ブットの廟がある。

父ブットは三男、嫡男でないのでカラチで家庭を持つ。首相になると、主要産業を国有化し、封建領主制を廃止するのである。GHQが日本で断行した「農地解放」だ。ベナジール家に対する農民貧困層の人気はここらに根拠があるのだろう。毛沢東にかぶれて服装までマネしたアリブットは社会主義政策に傾注するが、この試みはご多分に洩れず汚職官僚を大量生産した。この官僚腐敗体質が娘の時代にも引き継がれ、ブット家もまたその体質が染み付いていたのではないか。

●「国盗り物語」
さて、農地解放はしかし本家の土地を小作農に分け与えたのかどうか、ブット家は今日も大地主ではある。ベナジール暗殺後のドタバタは「国盗り物語」そのものではないか。ズルフィールの時代から政敵暗殺、お家騒動に明けくれた40年であった。19才の息子を跡継ぎにして男やもめ、プレーボーイで名高いアシフ・ザルダリが院政を敷く……スローガンの民主主義はどこへ失せたのだ。ムシャラフを非難するメディアにむかって野党側の実体に眼を覚ませと言いたい。ムシャラフの誤りを認めた上でサポートしているのは共和党マケイン。

アシフ・ザルダリはロンドンに帰る息子ビラワル・ブットを送ってドバイまで、ドバイまで来ていた娘(後継を拒否)家族と会い、息子がロンドン行きフライトで去った事を確かめて例の宮殿にはいり主のように振る舞っている。ブット三世19才と言えば、悪源太義平が保元・平治の乱で大暴れし、京の河原で首を刎ねられたのが20才のとき、幕末の志士は10代で奔走した。どうせ国盗りなら三代目さん、ロンドンから遠慮せず発言してごらん。

● スコットランド・ヤードの捜査開始
ブット暗殺の直後にムシャラフに支援申し出の電話をした欧州首脳は仏サルコジと英ブラウンである。サルコジはすぐ親書を預けて首相をイスラマバードに派遣した。フランスのこの首相ご存知ですか? 野党から抜擢された国際人ですが、いい役回りを貰えずサルコジもひどいね。ブラウン首相はは『お役に立つ事があったら何なりと仰せつかる。捜査員を派遣しましょうか』と提案、ムシャラフは有り難く受け、パキスタン警察が協力して捜査の緒についた。

ザルダイは故ブットの解剖を拒否し、英警察は信用できない。レバノンのハリリ暗殺のように国連捜査団に派遣を要請している。ムシャラフも国際捜査団を歓迎すると答えている。しかし過去にもスコットランド・ヤードが何度かパキスタンの政治暗殺捜査に関わったが、改名されたのは一件もない。捜査中に政変があって追放されたり主な責任はパキシタン側にある。またハリリの場合はシリアの黒幕疑惑あるため国を超えて捜査が必要だったため国際捜査機関を必要とした。ブット暗殺のような国内での事件に国連が捜査に関与することはないだろう。

その他:総選挙のほかにパキスタンの不安定な状況は北西辺境州 (North-West Frontier Province) におけるタリバン/アルカイダの動きと、米機関が直接介入を企てているというNYタイムス発情報の波紋。インダス川などの渇水による電力力不足、地方によっては数ヶ月の停電が懸念されている小麦粉と小麦貯蔵が減少、治安の悪い場所でロジスティックに支障があり、またヤミで国外に売りさばく業者の取り締まりなど。(了)



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