●変革ヘンカクと草木もなびく
ニューハンプシャー(NH)でもオバマがヒラリーを日曜日に抜いたという。オバマの「変革」旋風は人間のワザをもってしては処置無し、雪ダルマ式にひとまずゴールの2月5日までゆきつくのじゃないかな。この州はヒラリーは引き潮にさらわれる動画をみるように生々しく退潮いちじるしい。アイオワに続きNHでも負けたらツキが落ちたように他州にも波及するだろう。
奇異に聞こえるかもしれませんが、わたしはオバマとくると反射的に小汀利得(おばまとしえ)が脳裏に浮かんで離れない。わたしらの同世代にはオバマ=小汀を連想してしまい悩んでいる仲間がいるにちがいない。小汀利得とはカラーテレビがまだなかった頃、時事放談という番組に細川隆元や藤原弘達と出演していた政治評論家です。みなさん天下をぶった切るべらんめえ調の直言、いまじゃとても許されない放言番組でした。そのぶん面白かった。
日曜、米ABC-TVのトークショウで「変革」云々にリ民主党チャードソン候補が"Is experience a leper?"『体験はライ病というのか』と反問。日本の政治家が口にすれば辞職に追い込まれるが、レプラは米で禁句になっていないようだ。この病原菌を発見したDrハンセンはベルゲン出身の医師、患者を治療していた隔離病院は博物館になっている。館名はライ病博物館、日本人観光団体はもちろん絶対いかない、知らされもしない。ハンセン氏病という呼称は日本の方こそ偏見がある証左。
本題にもどります。それにしても年末調査で45%の支持を得ていたヒラリーがNHでの投票をまえに10%以上失いオバマに13ポイントもリードされた。キーワーどは「変革」、バラク・オバマのCHANGE連呼が図星に成功した。ノンポリの20代の無党派層が未来永劫にとびつく標語である。。アイオワでもNHでもアメリカ全土でも日本でも、若者の政界離れは世界に共通している。この層を呼び覚ました者が勝ちである。そのためだろう、アイオワのオバマ大会に俳優のチャック・ノリスが舞台に上っていた。
●ヘンカク・ハンターイ
わたしなど小汀に取り憑かれている年齢になると「変革」がイヤでね、今の状況を少しずつ改めよくして行けばよいではないか。ブッシュはそれほど悪いのか。ま、悪口も書いたけれど、わたしゃいまでもブッシュ政策に大筋賛同しています。掻き回さないでくださいと言いたくなる。
では共和党はどうなるのか。NHは予想通りマケインがいよいよ認知されてきた。この偉人については常に敬意を表してまいったのでありまして、喜ばしいのはもちろんだが、「変革」を連呼する人ではない。もちっと連呼したら、とよからぬ思いが悩ましい。
●民主党、党集会のプロセス
さて、米大統領選のプロセスはアメリカに住んだ人ならご存知であっても、他国者には複雑怪奇である。アイオワ州の或る小さな党集会の選挙方法を一部始終当地ノルウェーのニュースチャネルで見て初めて知ったのですが、投票用紙を入れるんじゃないんですね。小さな映画館みたいな会場に三三々五々集まってきた人たちは、あらかじめ候補者別に仕切られた座席に座る。誰を推すか一目瞭然である。
皆が揃うと各候補者の地区リーダーとおぼしき人が推薦演説をおこない、一巡終わると聴衆のなかには思い直す人が出てくるのですな。合図とともに別の候補者のところに席をしてもよい。ブーイングあり、迎え入れる拍手ありなかなかエキサイティングです。はじめから少数だったリチャードソンの席は『勝ち目のない人を応援したってしょうがない』だからでしょうか、殆どからっぽになるくらいで笑いに包まれる。オバマ席とヒラリ−席では若干オバマ席への流れが多かった。再度の着席が終わった所で、各仕切りの座席数を計算するやり方である。
この方法だと全員が顔見知りの小さな地方で、民主党員か共和党員かはもちろん、誰がどの候補に加担したか、白日に晒すことになる。開けっぴろげで羨ましいプロセスなのですが、小さな村社会で諍いがないのだろうか、地方ボスだっているだろう。わたしはやはり不可解です。これをヘンだと思わなくなったらアメリカ通だ。
●ニューハンプシャーの独立ブレる隊
なお、NH州の党員でない独立グループは40%と多数。投票にあたって民主・共和両党のどちらかに参加するわけだがその際、人物本位で消去=加勢できる。たとえば、オバマ支持者が彼はもう大丈夫、ジリアーニを助けに共和党集会へ、まった共和党びいきが強そうなマケインはもういいオバマがきらいだから民主党集会へ行ってヒラリーに入れるという具合。もっとも日本人有権者の大多数が党員でないのでこのあたりの事情は覚えがある。(了)