●北海石油のアガリ
ノルウェーが石油の輸出国であることは北海石油としてよく知られている。政府はこの北海石油からのアガリを（税収）を生産が始まった70年代から貯蓄に備え、90年代から「国家石油ファンド」として計上してきた。北海石油の北海はイギリスと西ノルウェーの間の浅い大陸棚を指し、ここでまず石油脂源の開発生産がはじまったのでいまでも総称としてつかわれるが、実際はこの北海は採り尽くしてあまり残っていない。現在は北海の北西にグリーーンランドまで広がる「ノルウェー海」と北極に向かう北の広大な「バレンツ海」大陸棚に生産が移ってきた。

日本ではもっぱら今年改称された「国家年金基金」を使われているようですが、現在でもOljefond『石油ファンド』が通称として広く用いられ、よほど公式な文書でなければお目にかからない。消費税を社会保障目的税にしようというデンとおなじで口当たりの良い言い方にかえるようなもの。ノルウェーの年金基金は特別予算や運用利回りの４％を年度予算に組み込まれているが、年金には一切支出されていません。

いま支払われている年金は国民が負担して給料から年金に差し引かれるプールで間に合っているのですが、将来不足するのはこの国も例外ではない。ですから増えれば増えるほどありがたいSWF（Sovereign Wealth Funds）ではありますが、原油価格の高騰でその分不労所得であるので対外的に気が引ける。改称の一因である。

● 総人口割りでひとり頭850万円の石油資産
さて、本欄では通称の『石油ファンド』使います。は今年中に45兆に達するだろう、といつかのコラムで大風呂敷のつもりが、達するみたいですぞ。10月〆の総額は今日の円高レートに換算しても40兆円をこえました。これを赤子も死にxも全ての人口470万人で頭割りすると一人43万クローネ=850万円也の石油資産がある。

基金は財務省のなかにある石油ファンドの運用チームがあり、ロンドンに投資事務所を置いて、優秀な雇われトレーダーが現場で相場を張る。トレーダーは歩合制だから、財務大臣より稼ぐトレーダーがザラにいる世界です。現在の財務大臣は左派で反資本家主義の闘士ですが、現場にきて激励してましたがな。やはり財政は豊かであるべし、ですね。

●投資先のモラルはOKか
基金の半分は世界各地の銀行に分散して安全な定期預金にしておいて残りを投資する。投資先は世界40カ国、日本へはなんと12％もつぎ込む○優待遇です。やはり日本の優良企業は底堅く、武器を輸出しないので人権ウォッチャーから突っ込まれる気遣いがないから、冗談じゃなく事実そうなのです。アジア全体でも15％と低い中で突出しています。なぜかと言えば、北欧の人道主義は凄まじく、福祉政策が進んでいるなんて気楽なはなしより、この正義、平等、民主主義を唱える民間団体（その殆どは政府から補助が出る）の目が光っていて、インドや中国の低賃金、労基法無視の企業に投資できない足かせがあるからです。

先月は、代表的な監視組織Norway Watchは軍政ミャンマーに進出しているスタートオイル社に引き上げろと詰め寄りましたが、議会はかの国が民主化される将来のために備え小額を足場にと、承認しなかった。とはいえ国有の投資ファンドが業務内容ををオープンしているのはおそらくノルウェーだけだろう。

●手堅く克服したサプライム波及
いまノルウェー通貨は対ドルで非常に上昇したため、海外投資での利益をクローネに直すと目減りが激しい。しかも保有する米の債券価値はこれまたガタ減りのはずである。にもかかわらず、10月に一兆６千億円、今年10ヶ月で約５兆円増やした。石油ファンドの統轄責任者であるKnutKjｾrの談話『市場が不透明なとき、投資のキーワーどは堅実の一語に尽きます』。（了）