●トルコ軍イラク北部に越境攻撃
トルコがイラク北部に越境攻撃。いつ攻撃するかは時間の問題でしたから、PKK（クルド労働者党、トルコでのクルド人分離を要求して武力闘争）の基地を数日、波状的に空爆したが、もぬけのカラが多くたいしたダメージを与えていない。けれどもPKKは解散せざるをえないだろう。PKKは突然、支持者をすべて失い、イラク政府からばかりかクルド人同胞からもテロ集団と呼ばれるようになった。その理由を我流で探ってみようとおもう。

そもそもの引き金は米下院外交委員会が第一次世界大戦中におきたオトオマン・トルコによるアルメニア人の虐殺を「虐殺」と容認したことにトルコが反発、沸騰する世論のガス抜きにクルド分離派への攻撃を一段と強めた。クルド分離派は嫌米感情のエスケーブゴートにされてしまった。

●越境攻撃を容認決議したトルコ国会
イラク北部の山岳地帯を聖域にしているPKKの陣地を越境攻撃してもよい、とイラク国会が賛成多数で容認したとき、やっぱりと思う反面、常識で考えるとイラクへの宣戦布告ですから、国際紛争に発展しかねないぞ。と思ったのですが、全然違う方向へ。

トルコ軍の動きに窮したPKKが国境に集結中のイラク部隊を急襲し12人のトルコ兵を殺害、捕虜を連れ去ったのがイケなかった。首都アンカラは報復のデモで埋め尽くされ、止めようがない。それでブッシュはPKKをテロ集団と非難しトルコの越境攻撃を黙認するのです。トルコ領内の米軍基地使用がこれで安泰になるならおやすい御用でございます。

●トカゲの尻尾切り
マリキ首相はシーアだからPKKは国内にいない方が良い。トルコが追っ払ってくれるならオンの字です。またイラク北部で平和に暮らすクルド人にとってもPKK は異分子になりつつある。クルド出身のジバリ外相は暫定政権の頃からズーっと、首相がコロコロ変わっても外相の地位にある。そのジバリ外相とタラバニ大統領というイラク国内のクルド出身最強のふたりがそろってPKKをテロ集団と名指しで非難におよんだ。トカゲの尻尾切りである。

トルコ政府はテロ組織への武力攻撃にかぎり、越境攻撃のお墨付きをイラク政府からもクルド人の自治地区からも得られた。ごく最近まで、EUはトルコ加盟の条件にPKKとの政治的解決を挙げていたが、テロ集団にされてしまっては軍事的解決でよしとされる。シリアにもトルコ内でゲリラ・テロ活動をおこなうクルド人組織がある。トルコにはトルコ社会に溶け込んだクルド人、貧困に棄てられたクルド人、迫害されるクルド人など多数、およそ1300万人が住んでいる。クルド人問題はPKKを叩いても終わりではない。さてどうなりますか、どっちにしろ札付きにされサポートを失ったPKK は存続できないだろう。（了）

余談：他人の失敗、失策をあげつらい、エエカッコする人間っていやだね。、他人の愚行を栄養にするな！　福田首相のメルマガ25日に目を通した感想です。