安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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ライバル、プーチンとサルコジ
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〈 2007年 10月 17日 水曜日 )


●プーチンのカスピ海構想
テヘランに入ったプ−チンは、イランへの武力攻撃に断固反対し、核技術開発は当然の権利と共同声明に調印した。ロシアが建設を請け負っているブシェールの原発が2年遅れていることから、両国の関係は実際のところそれほど緊密ではないが、西側へのすごいブローである。これで米・EUがイラン経済制裁を強化し、孤立化を図る政策はもはや現実的ではなくなった。ブッシュだけでなくヒラリー・クリントンほか民主党議員も支持するイラン武力攻撃の選択肢は、より強まるといえ現実味は薄れてきた。

イランがアメリカに外交勝利をおさめた。アフマディネジャドは濃縮ウラン設備の稼働に気兼ねなく邁進できる……。という具合に、困った事態になってきました。イランの核に対するプーチンと米・EUリーダーの基本的な違いは、プーチンはイランが核兵器を作らないと信じているのに反し、西側はイランのいう平和目的を深く疑っていることにある。ウラン濃縮にイランが拘るのか、既に相当貯め込んだ濃縮ウランの用途は核兵器製造以外にない。怪しいのである。

プーチンはテヘランで同時にカスピ海周辺5カ国首脳会議を開催し、石油資源を他国に採られないよう結束、いかなる状況でもメンバー国に他国が軍事力を行使する事を許さない決議がひとつ、もう一つ重要な調印事項に、核拡散防止条約を締結し、IAEA査察のもと平和的核エネルギー開発の権利を保証する、とある。すると周辺5カ国のアゼルバジヤン、カザフスタン、トゥルクメニスタンもイランと同じようにIAEA を「お為ごかし」にして濃縮ウランを製造できる理屈だ。

●サルコジの地中海構想
イランをてんで信用しないサルコジはモスクワでプーチンとイランの核問題で意見が対立したた。サルコジは今でもイラン武力攻撃をオプションにしている。プーチンの権力独占と、来年の引退後も権力温存を謀る動きに危惧を表明してプーチンと対立したライス長官といい、ロシアと西側の関係が非常に悪い。そんな中、サルコジは地中海沿岸国同盟構想をうちだした。
http://en.wikipedia.org/wiki/Mediterranean_Union

モロッコ、アルジェリア、リビア、エジプトかたレバノン、シリアなど国情も政治体制も異なり、トルコとギリシャ、イスラエルとパレスチナという敵対関係にある国々も含めた16カ国からなる。ASEAN連合よりもっと纏まりにくい構想であるが、EUより垣根を低くして移民・通商ほか協力できる所から始めようという、ポスト・イラン/イラク、アフガンを視野に入れた構想である。

地中海沿岸ではない北ヨーロッパのEU各国、特にドイツはサルコジの構想に冷ややかであるが、プーチンのカスピ周辺国連合が成功すれば、地中海沿岸同盟に拍車がかかるだろう。あながち夢物語ではない。(了)

気になる事:サルコジがセシリエさんと離婚するらしい。避暑中、ブッシュ家の招待をドタキャンしたのも不仲のせいか。一度亭主を棄てた妻と復縁したサルコジさん、ムリは禁物ですね。



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