安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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トルコ議会VS米下院議会
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〈 2007年 10月 16日 火曜日 )


●トルコ軍イラク北部を爆撃
それみろ、言わんこっちゃない。米下院外交委員会のアルメニア人虐殺認定決議の反応です(10月11日コラム「アルメニア人の怨念」)。トルコはイラク北部を爆撃しました。250発の砲弾とミサイルを10発、イラク国境内の村近くの山に射ち込んだ。無人の山の斜面ですからトルコ側は被害をおこさないように今の段階ではクルド分離主義者への脅かしくらいだが、本当の意図はアメリカへの警告である。外交委員会での採決が下院議会でも可決されるなら黙っちゃいないぞ!駐米大使を召還した外交措置くらいじゃ済まないぞ!という言う警告である。

トルコ軍の国境司令官はイラク側が先に撃ってきたので思い知らせてやったと、お決まりの回答。事実に反する。トルコ政府は北イラクのクルド反乱分子に武力攻撃を容認するよう閣議にかけるところまできている。今週にも採決されるようだが、国境を越えてトルコのクルド問題を広げるのは止めようという良識が少なくない。

●トルコを宥めるブッシュ
それには今回の爆撃でクルド側からすぐ米に介入を請願しているように、クルド自治区と米のあまりにも良好な関係が不気味である。さらにトルコがメンバーであるNATOが米の肝いりでトルコ政府に思いとどまるよう働きかけている。EU加盟が遠のいたトルコは、ここで軍事行動を起こせば、小さくなった可能性をさらに摘み取る結果になるので、イラク北部に国境侵犯することはないだろう。侵入を繰り返していた90年代とちがって、すぐ近くに12万の米軍が駐留しているのである。

ではあるが、その12万の米軍が機能しているのはトルコの空軍基地を使わせてもらっているおかげ、もし米空軍補給機と戦闘機がトルコの基地を追い出されたなら。イラクの米軍は削減を余儀なくされる。ウーム、やってみてもいいか。ま、それほどトルコは米に対して優位にある。かと思うとトルコ軍は米の兵器産業に頼っている弱みがあり、高飛車な態度はとれない悩ましい状況におかれている。

ロシアから中東へと歴訪中のライス長官はトルコが訪問スケジュールになかったため、土曜日部下の高官二人をアンカラに送っった。宥めるためである。ライス長官はプーチンと大喧嘩してきたばかり、ブッシュのため中東和平最後の仲介に頭がいっぱいで、トルコで一悶着は絶対避けたい。下院の動きにイライラして形相が嫌悪です。

●中東の特殊性
そもそも民族が混じり合っている地域が多い中東の国境は、英仏列強が無頓着とおもえるほど宗主国の都合で割り振りしたため、あちこちに火種が燻っている。そういう事態はアフリカ、中央アジア、東南アジアでも嘗て植民地であった国々に共通しているが、中東は民族+イスラム宗派がオーバーラップして解決を複雑にしている。中東イスラムが平和な地域になれば文明の衝突なんかあり得ないのです。(了)



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