●山峡ダム被害
中国のオリンピックがスポーツ大会として成功したとしても、中国の体制に種々の疑問が投げかけられるだろう。オリンピックが終わって年末か09年のはじめに中国長江上流の山峡ダムが完成するが、中国政府の祝賀行事とうらはらにダム建設による環境破壊がクローズアップされることは確実である。
このほど新華社通信が「山峡ダム周辺の住民少なくとも400万人が移転する事になる」と報じた。ダム完成にともない水位があがるために移転しなければならない人口が400万人、ノルウェーの人口に匹敵する。さすが中国なんて言っておれない事態です。いかにこのダムの広さが巨大か、長さ660kmといえば世界最長のソグネフィヨルドの3倍ではないか、Oh shit!
このダム湖水のためすでに140万人が移転させられたが、全員が代わりの農地と家を補償されたわけではない。無理矢理都市部に追いやられた農民たちは就職がむつかしくホームレスのニコヨンになったという。
建設の決定を下した江沢民がエネルギー欲しさに目をつむったツケ、バチである。水位が上がるに従って土砂崩れ、山崩れの危険が増し、それがダムに流れ込む事でまた土地を失う者がふえ、飲料水の悪化を招くばかりか、名物の揚子江氾濫・洪水をさらに悪く仕向ける結果になるだろう。またダムより西の下流では今年特に大雨が多かったため何度か大洪水をおこしている。大雨がダム周辺と下流両地域に降ったときには未曾有の惨事になりましょう。
●改善されない太湖汚染
660キロ周辺の工場排水による汚染を放置すれば、魚も棲めない「アオコ大発生」汚臭の太湖のようになる。太湖は中国で3番目に大きい湖で琵琶湖の3倍もあるのです。太湖は揚子江から入り揚子江に出る。北部には墨水画の世界=黄山などがある景勝地だが、湖周辺には化学工場が多い。水を大量に使うのと、下流の上海に水上輸送できる地理的利点があるため集中しているのだが、廃液を棄てる量も尋常ではない。中国政府が監視を厳しく、地方の汚職官僚を摘発していることは大々的に報道されるが、汚染のために生活を失った農民や漁民の抗議を粉砕し、活動家を逮捕する強権はちっとも変わっていない。中国ほどやるべき事を山ほど抱えた国はないが、政府自ら招いた失政による「後始末」のなんと多い事か。(了)