安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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ミャンマー、萎んだ灯
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〈 2007年 9月 30日 日曜日 )


●犬死にをさけたおとなしいミャンマー人
軍政の国営新聞の名が『ミャンマーの新しい灯』というから皮肉でタイトルをつけました。29日に制圧宣言が出て、僧侶が始めた抗議行進はうねりが出て4日にして制圧された。坊さんたちが住処の寺に閉じ込められては、警察・軍隊は市民への武力鎮圧に遠慮がなくなる。治安部隊に立ち向かって射殺されるほどほど無意味な死に方はない。僧侶の灯した反政府の希望は潰えたが、それで良かったと思う。おとなしいミャンマー人で良かったと思う。

ミャンマーの民衆ほど政府との戦いにおいて非対称な存在はない。イラクでは各位家庭に何丁もの銃器があるほど武器が国中に蔓延しているが、アジア各国では総じ一般のて銃砲所持が限られている。ミャンマーのコラム初回で書いたように治安警察と軍の圧倒的な力に勝ち目はなかった。せめてもの救いは、死者が少なく、98年のように路上に死体が並ぶ惨劇に至らなかったことである。もちろん死者は公表の13人はウソで実数はもっと多いだろうが。ネットと携帯によるボーダレス情報社会が軍政を牽制した役割が大きい。ヤンゴンやマンダレーのネットカフェを封鎖したり、反政府サイトを切ったが、全ての回線をとじれば公機関の通信まで出来なくなるので、徹底できなかった。

●暴動に結びつかない国
一部の過激派がせいぜい石をなげるくらいだから暴動に発展しようもない。古典的な市民革命のシナリオは王宮に押し寄せ放火する。近年はウクライナのオレンジ革命のように政府建物に乱入・占拠するのであるが、ミャンマーの首都ヤンゴンに政府建物がないからして、攻略すべき建物がない。となると大群衆が詰めかけることもおこらない。

数年前突如として、政府所在地を密林の中に移転すると決まったとき、カンボジアのポル・ポトがやはりジャングルを切り開いて本拠地としたようにウサンクサイ感じはしたが、真意がつかめなかった。あれは民衆の蜂起から軍政を護るためにあったのかと今にして思う。この周囲を要塞のように固めた軍事基地と政府建物の集合地ネーピードー(Naypyitaw)が正式には首都、第一の都市ヤンゴンからおっそろしく離れた、東京と京都くらい離れているジャングルにある。

●国連特使に『お話は承った』
ヤンゴンに到着したガンバリ特使は、前回と同じようにこのネーピードーに連行(送迎)され、主席にあたるタン・シュエ議長とも最後に面会するだろう。議長に『お話は承った』と締めくくられて、そのあとおそらくヤンゴンで自宅軟禁されているスー・チーさんに会って励ます。なんのことはない前回と同じコース、同じ無成果におわる。後ろ盾の中国がブレない以上、タン・シュエは米・EUの制裁が会っても平気だ。

福田首相のおっとり刀
日本外務副大臣が長井健司カメラマンの真相究明に赴くのはいいが、それは個人のレベルであって、国家間レベルでの注文はマレーシアとタイの非難決議にくらべ福田首相は柔らかい。経済制裁を仄めかしもせず中国に影響力行使を要請することもなく、おっとりしたものですな。国益を考えてと、まあそうでしょうけど歯ごたえのない印象は拭えない。(了)



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