安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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ベイルート、反シリア議員を爆殺
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〈 2007年 9月 20日 木曜日 )


●ハリリ以来のメガ級カーボンブ
19日、人通りが多くなる午後5時過ぎに、ベイルートのクリスチャン地区でしばらく途絶えていたカーボンブが炸裂した。ハリリ前首相が爆殺されたより未だ大きいメガ級の大爆発である。六つのビルが一部崩れたり窓ガラスが吹き飛ぶ被害をうけ、映像では3カ所で車が炎上していた。ほどの威力で9人が死亡40人が重軽傷を負った。死亡者には反シリアのガネミ議員がいる。

あと一週間に迫った大統領選挙に候補のガネミ議員(64才、弁護士)を殺害したことは明白。レバノンの政治体制はイスラムのスンニとシーア、それにキリスト教でそれぞれ、首相、国会議長、大統領を分担することを法規に明記している。そして現大統領ラフードの任期切れの前に国会議員によって次期大統領が選ばれる仕組みで、その選挙が一週間後に行われることになっていた。

●反シリア(親西洋)と親シリア(反米・イスラエル)のレバノン
政治的にはシニオラ首相が率いる西側寄り政府と、ヒズボラが率いる野党の親シリア派にわかれる。親シリア派の背後にはシリアとイランの影がある。政権を宗派で分割することはイラクと同じだが、マリキ首相のイラクが機能していないのに反して、シニオラ首相のレバノン政府はこのところ落ち着きを取り戻し、内戦の心配は遠のいたと思われたのだが……。

もっとも近年ジャマイェル元大統領の息子やスンニの議員が暗殺されたり、05年にハリリ首相が爆殺されてから反シリアの議員は今回のガネミ氏で5人目、現実は厳しいものがある。それでもシニオラはイスラエルの侵攻から立ち直り、ヒズボラ拠点を叩いて政権を固め、レバノン安定をもたらした。

●第2次内戦のおそれ?
そんなわけで、今回久しぶりにメガ級ボンブがあっても一過性ぐらいに聞き流していたが、そうでもないらしい。というのは11月に任期切れになる現大統領の後任が空白10日以内に決まらないと、どの党派から新大統領を選んでも良いという決まりがある。するとシーア派からが有力で、そうなればハリリの右腕であったシニオラ首相は舵取りが難しい。

またこのゴタゴタから野党親シリア派が独自の政府を作るウワサがある。ほんとうなら与党政府と国を二分するわけで、レバノンは再び長い内戦の時代に後戻りする。それだけは避けたい。中東では最も自由で、教条的ではないレバノンをなんとか維持できないものか。(了)



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