安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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病人の杖を蹴るなかれ
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〈 2007年 9月 19日 水曜日 )


●見つめようとしない衆目
ショッピングセンターの薄型TVの売り場を横切るとき、安倍首相辞任記者会見の臨時ニュースを見かけてビックリ立ち止まる。売り場モニターの半分がこの臨時ニュースであと半分は小沢征爾が棒ふりするオケの映像を流している。臨時ニュース画面の前で二人が話しているので近づくと、なんと店員と客が画質の話、セールスの話でありました。

唐突な安倍退陣に無反応とはどういう人種か、今このショッピングセンターには数千人の人がはいっていて、このTV画面を横切る人は5分で100人に達するだろう。でありながら立ち止まる人はごくわずか。音は切ってあるのが多く、出していてもヴォリュームが小さく絞ってあり、スピーカーの真ん前で聞き耳を立てなければ聞こえない。それにしても人々の無関心ぶりはをどう解釈していいのか、この国の衆目は決して見つめようとしない。わたしゃ途方に暮れました。

●見るに偲びない廃人
安倍首相の様子は立っているのがやっとという風情で、質問への答えぶりは頭が空回りしている。宰相は憔悴しきって見るに偲びない廃人におなりあそばした。

なぜ安倍晋三はブレークダウンしたか、真面目な人間ほど精神の病を起こしやすいのは私の周囲でこの種の心の病を患った幾人かに共通している性格である。
「こうあらねばならない」という理想、自己の思いに忠実なあまり、挫折に絶えられない。敵対者へのファイティングスピリットは旺盛に維持できるが、味方の内輪もめや支持を失うと途端に気弱になる。

●窮鼠猫を食まず
新内閣では安倍さんを信じてサポートする仲良しの取り巻きブレーンが排除され、身内を失った。ベテランを起用したのはいいが、彼らにしてみれば安倍晋三は洟垂れ小僧である。「仲良し人事のどこが悪い」と以前書いたように、そもそも仲良し人事で内閣府を固めないとやりたい政策を強引に押し進めることは不可能なのです。麻生幹事長以下、ベテラン領袖が洟垂れ坊ちゃんを支援してくれるはずもなく、安倍晋三は孤立した。

学生に講義するときはなんでもなくて、先輩シニアを前に講演する日になるとかならず下痢や嘔吐で『今日は行けない』と直前に連絡してくる優秀な研究員がいました。代表質問を受ける直前にタオルを投げた安倍さんとおなじ兆候である。

●安倍病人をいたわりましょう
ノルウェーの前首相ボンネヴィクはタフでタヌキだが、第2次内閣で数ヶ月心衰症で休養したことがある。原因は内部与党内のごたごたと造反である。休養中は家族と限られた友人以外の接触を断ち切って充電、任期を全うできた。このときボンネヴィク首相は支持率が落ちていたが、国民の同情といたわりに包まれた。逆に安倍首相は無責任だとか、ストレス耐性がなく国家のトップにふさわしくないと様々な批判を浴びているものだから、他国も同調して安倍はダメな男となってしまった。この国の民は病人の杖を蹴ったのです。わたしゃ途方に暮れました。

安倍晋三がやろうとしていた公務員制度改革は頓挫する。舛添氏の年金問題への取り組みも挫折するだろう。つまるところ舛添氏の後ろ盾は安倍首相だったのですから。(了)



Pnorama Box制作委員会

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