●シャリフ復活は難しい
ナジャフは終身刑になったが。翌年にムシャラフは恩赦をあたえてサウジに送り込んだ。これはサウジ王室がシャリフ一族を庇護するので亡命させよという要請に応じて一族40人のサウジ亡命を認めた。ここでもムシャラフの意外な穏健性が見える。
約束では10年間帰国を認めないとかでしたが、詳細はわからない。今年シャリフが帰国すれば未だ10年経っていないから、政府は拘束のうえ訴追がシナリオにある。罪状は親戚を含めた収賄、解雇したムシャラフが帰国するのを阻止しようとした首相の『ハイジャック』謀略など、裁判のやり直しである。
ナジャフが現役の頃、最大与党でPMLのメンバーの半分がムシャラフのPML-Qに鞍替えしている。彼らがみなPLMに出戻りすると派思えない。シャリフは野党連合を結集して新党を擁立したかあるいはその進行形ですが、果たしてどうか。支援デモの群衆に惑わされてはならない。あの国の熱気は冷めやすいのです。
●ブット復活は殆どない
ブットはムシャラフが軍を手放すことを条件に首相就任を受諾したとが、ムシャラフは軍の最高司令官を手放す意思はないので密談は決裂したとされる。そんなところだろう、納得できるない内容である。
ブットはロンドンの亡命先から自派PPPの勢力拡大にそれほど成功していない。かなりの政党になるとおもわれるシャリフのPPMと野党連合を組む誘いにも反対だ。この人にも収賄、不正蓄財の嫌疑があり、導力に疑問。父はアまるっこい顔のアリ・ブット首相。ダイナスティー育ちでハーバードとオックスフォードに学んだ美女は、既に2度首相を務めてまだやる気のマダムに成長しました。御歳54才。もはや過去の人。ナツメロ族はそれほど多くない。
●ムシャラフの悲劇
しかし、ムシャラフはフンギリの悪い独裁者で、例の神学校突入のあと、厳戒令を何週間も躊躇したあげく取りやめたように、今回の最高裁判決が出た同日23日夜のTV、自派のお手盛り番組ではあるが、スーツ姿で全国民に和解を呼びかけた。"There is a need to forgive and forget the past and to move ahead," 困った時の常套句であるが、実に穏健ではないか。思うにチョウドリ最高判事はたしかに司法権でもって政治的に介入することしばしばでしたから、権限の乱用を理由にムシャラフが罷免したのです。で。これが当たり前ですが違憲となり、チョウドリに返り討ちになった。
チョウドリ罷免は違憲、だが恩赦条件を最高裁が無効にするのも違憲じゃないのか。しかるにムシャラフは最高裁の判断に従がい、司法のの独立性を認めた。またパキスタンは言論、行動の自由が大幅に認められ警察国家ではない。インパ紛争に和平の区切りを付けた功績も或る。軍と政治の権力を独り占めにしたわりには実際面で弱く、その独裁ぶりはプーチンより格段に劣る。それもこれも流血を嫌う性格が成せる業といえばそれまでだが、ヒョンなことで軍事政権の長になり、米に押しまくられてイスラムテロと戦うが、かえって国内の宗派を頑にさせ窮地に陥った。ムシャラフの悲劇はクーデターに至る立場にいたこと、運命の偶然である。
●パキスタン選挙の予想
総選挙(下院)は10月、そのあとで大統領選挙という日程だが、ムシャラフはそれでは危ないというので、大統領選を前倒しまたは下院選挙を後回しにしたいと企んでいるウワサ報道がある。するとまたチョウドリにダメと裁定されますぞ。わたしの予想は、ムシャラフがTVで約束したように公平で透明な選挙にもっていければ、与党PMQ-Lは過半数はとれなくても最大政党になる、であります。そうなったからっておめでたい訳ではありませんが。(了)