安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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米ハイウエイブリッジの崩落
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〈 2007年 8月 3日 金曜日 )



●点検不十分による人災
人災に関しては、被害者への思慮とは別に多いに辛口批判しようではないか。この橋がペシャンコにドミノのように崩れた原因は人災だ。地震や雷のせいでもない自発的崩落、寿命だった。40年で寿命とは早いが当時の強度安全基準がそうだったので、建築家に責任はない。要はメインテナンス阪神大震災でも80年代以降の建築基準に沿った建物はヒビ程度ですみました。

写真手前が崩落惨事を起こした4車線橋(後ろ側は2車線の新しい橋で『10番街ブルリッジ』と呼ばれる。いかにもひ弱で、サビが見えます。この構造は1960年代に流行した鉄骨やアルミパイプを三角に連ねてどんどん広げてゆくトラス工法といって、自由なフォルム形成が可能、球形や多面体の構造物が作れる。
●疲労していた『非冗長』構造
トラス工法そのものに問題はないが、三つのスパンが端から端まで一体となって接続しているため、一カ所が崩れると全てのスパンが次々に崩れてしまう。物理用語で「余りがない構成」を「非冗長non-redundant」と形容し、この橋の構造がまさにこれである。写真うしろの橋は各橋脚が道路面を支えているが、崩落した橋の橋脚はゆるいアーチのトラス垂直部の受け台となる。トラスが連結しているため鋼材の一カ所が歪むと連なって折れ曲がる。ひとつこければみなこける構造なのである。

● 崩落の引き金
市いちばんのヘビー交通量による多年の振動が積もり積もってトラスが金属疲労をおこした故の崩落だが、その引き金として考えられる要因は:
○ノロ運転で増す車の重さ:この日は修理や橋灯の点検のため4車線の片側2車線通交、ラッシュ時のため数珠つなぎの車はスピードを落としていた。そのため車の重量がかかる。
○急激な温度差:午後涼しくなりはじめ、2時間で10度近くの温度差がでた。鋼材の急激な膨張と収縮。

●甘かった検査報告
当局、研究所が発表していた欠陥の指摘を整理すると、一様に評価があまい。
○ 2005年「US運輸省国道橋梁一覧」の格付けは、建て直し50%、構造欠陥は1ム9の4。すぐ対処すべきか微妙なポイントだ。
○ ミネソタ州運輸省はこのUS運輸省の評価に同意、しかし同じ欠陥度の橋が州内にたくさんあり、建て替えは2020年をメドにしていた。
○ 2001年技術検査団の総合レポートは、建て替えの必要はない。トラスに亀裂はみられないが3カ所の垂直鋼材に大きな荷重がかかっている。
○ ミネソタ大工学部報告書では路面底部のトラスに亀裂はみられないが、メイントラスと下部アーチトラスに多くの亀裂がある。荷重の最も高いこの部分の精密な検査が必要。

● 余談、名無しの橋
日本の橋はどんな田舎のチッチャな橋でも名前がついています。当地も公道の橋やトンネには必ず名前がついていて、たかが100mのトンンネルでも入り口の上に名前と長さのプレートがついています。いま崩落した橋の名前を書こうとしたら、どうも名前がない。金門橋やブルックリン橋のような名物橋には名前がついているが、名無しも結構ありそうです。映画になった『マディソン橋』は正確には『マディソン郡の橋』であり、固有名詞ではないのです。

崩落した橋には、特定するための番号『ブリッジ9340』というのはあるが、報道には使われない。いわくInterstate 35W bridge over the Mississippi River in Minneapo0lis.『ミネアポリスのミシシッピー川に架かる高速道路35号線の橋』と冗長に言わなければならない。しかし不便だ、この事件で今後きっと『ミネアポリス橋』と呼ばれる、とおもう。

韓国でもっと長くしかも新しい橋が見事に崩落したことがありました。同じ韓国土建業者がパラオで作った橋は開通し告ぐ崩落。どちらも鉄筋コンクリの橋梁がアネハ式のうえコンクリが粗悪であったため。(了)



Pnorama Box制作委員会

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