安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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英・諾戦闘機、ロシア爆撃機に発進
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〈 2007年 7月 23日 月曜日 )


題字「諾」はラクと読み、ノルウェーを漢字で表記するときに用います。

● ロシア爆撃機の訓練飛行

ロシアの爆撃機Tu95《 熊 》の北海領空接近を警戒するノルウェーのF16戦闘機。
写真;ノルウェー空軍、13日午前1時

ロシアの爆撃機が訓練と称してノルウェー領空に接近してくることは珍しくない。ロシア空軍の時候のあいさつみたいなもので、ノルウェーの戦闘機がそのつど顔出しに発進する。しばらくロシア爆撃機と領空に添って並んで飛び、領空侵犯になりますよという警告を与えるわけです。

互いにパイロットの顔が見えるまで接近すると手を挙げて挨拶を交わすそうで、こういうのって定期的で新聞種にもならないくらいなのです。先週は火曜と金曜の2回ロシア爆撃機がノルウェー領空に接近した。一回目の火曜日はTu95ヌ熊ネ2機が南下し、北ノルウエーで引っ返した。このときも当地F16ファイターが緊急発進し、しばらく一緒に飛んでロシア機は返って行った。

もちろん当地ではノルウェー通信が小さく伝えただけでTVニュースではボツになったのですが、英紙タイムズが伝えたので国際ニュースの端くれになった。しかしこのときはイギリス領空にまで南下せず、また伝えられるように専門用語でCUTTING(切断)という進路を妨げ、強制的に追い返すなんて危険な事はしない。ロシアも心得たもので領空内には入らないのですから。

●神経過敏なイギリス
イギリスとロシアはリトヴィネンコ毒殺事件の犯人引き渡しを巡って外交官追放のやり合いに発展、いま膠着状態である。プーチンが仕返しに脅しをかける『理由』もあり、イギリスがロシアの動きに過敏になるのも頷ける。

そして先週2回目金曜日の真夜中、といっても当地の夏の夜は写真のように明るい午前一時過ぎ例のツポロフ95ヌ熊ネ2機が訪問、このときは北海(ノルウェー南西とイギリスの間)まで南下した。例によってノ空軍F2戦闘機2機が緊急発進したものの、いつもよりよりちょっと長いなと感じたくらいで、やはりロシア機は領海の外側を飛行している。ノルウェー側は挑発行為と受け取っていない。しかし今回は英国領空に接近したため、英空軍が緊急発進し、スワッ一大事の印象を与えました。

●ロシア経済の好調と軍備拡充
さて、この傾向は何を意味するか。当地空軍の報道官によると、冷戦時代、1980年代には毎日1-2度、最多は年間600ケースのソ連機接近、領空侵犯があり、潜水艦は常時領海に、時にはフィヨルド深くにまで潜り込んでいた。それがロシア経済が危機におちいった90年代に激減、燃料と軍事費にことかいても基地に止まっていた。プーチン・ロシアが石油・ガス資源の輸出で予算が闊達になった数年前から時候のご挨拶に飛んでくるようになり、最近は年間10-20回ぐらいあるという。

プーチンは米に対抗する軍事力の増強を目指し、着々と装備の近代化を進めている。したがって今後も回数が増える傾向にはあるが、儀礼的な時候の挨拶をこえない回数だろう。ロシアがEUと軍事的にことを構える時代ではない。実際面では偵察衛星があり、軍事力をノルウェーのような平和度指数トップの国(日本5位、中国60位、米96位)に誇示するのはナンセンス。(了)



Pnorama Box制作委員会

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