安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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石油大国イランのガソリン規制、その後
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〈 2007年 7月 2日 月曜日 )


●ガソリン供給規制
焼き打ちにあったテヘランのガソリンスタンドや略奪された商店は12を超える。週末には軍警察がスタンドを警備、市内をパトロールしているので騒動はおさまった。しかし長いガソリン行列に市民の憤懣はおさまらない。

ガソリンの値段はは配給制が始まるひと月前から25%上がっていた。いまヤミの配給カード価格が急上昇し、ダフ屋が横行する事態に政府は配給以外にも買えるようにし、その値段を近く発表する。イランは公共交通機関が未発達のため、タクシーがやたらと多い。総じて中東は交通・通信のインフラが遅れている。タクシーがひと月800リットルでは商売あがったりだ。タクシー用のガソリン密輸・密売がはびこるだろう。

前回に書いたかどうか、40%以上のガソリンを外国から輸入する価格が50〜80億ドル、これにまた30〜60億ドルも補助金を出して安く市民に売っていた。政府は赤字だらけ、この輸入が中国も加わった西側の制裁で思わしくなくなったのをきっかけに配給制で赤字を解消しようというのが狙い。アフマディネジャドは産油国の富を貧者に分かち合うという趣旨で補助金漬けにしたのだが、インフレ止まらず、失業者はあいかわらず30%(公式発表は10%)台といわれる。ただしアフマディネジャド政府の言い分は『こういう痛い目に遭うのは西側の理由亡き制裁が悪い!』という論法で市民を煽るため、西側の思惑通りに進まない。そこが制裁決定6者協議(米英仏独露中)で制裁は逆効果と言い出す中露が合意を妨げる。

いまイランはウラン濃縮一時停止をすれば追加制裁をストップするか、打診中である。さて、イランには英語新聞が日本より多いが、言論統制が厳しく、ガソリン配給制度による騒動や市民の声がまったく記事にされていない。発表以来丹念にテヘランの英字5紙をチェックしていましたが、数紙が配給制施行を知らせたにとどまった。

土曜日に全紙に関連記事がトップで掲載されたのでオっとおもいきや、ハメネイ最高指導者が、ガソリン配給制を支持したという報道。政府はイスラム路線に添って政策を継続するようにという訓示でした。相変わらず市民の反応が伝えられない。日曜日にはチャベスがテヘランを訪問、アフマディネジャドと二人が気勢を上げている記事がトップです。チャベスはハメネイとも歓談。テヘランの選挙でボロ負けした与党なのですが……

西側報道では野菜果物が半年で3倍に高騰、住宅は1年で2倍に跳ね上がった。ガソリンの闇値高騰でインフレが加速するのは明らか。イラン60人のイラン経済人が署名して、物価上昇と経済政策の失敗を非難する書面をアフマディネジャド大統領に送ったという。(了)



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