安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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EUサミット、ナチスを持ち出したポーランド
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〈 2007年 6月 23日 土曜日 )


●特待優遇されたブレア
開幕前から大波乱を起こすと思われていたEUサミットが、メラケル議長が切るものは切ってまとめあげました。開幕前、問題は二つあった。ひとつはブレアが英国の主権はEUの指図を受けないと、拒否権をちらつかせて反対していたことだ。ブレアが放棄しないキーとなる事項は、1)英国労働法 2)外交 3)課税、犯罪、司法、人権などの国内法 4)移民。

上記1)の理由は新条約ではストライキの権利を普遍的に認めるため 英国の労使間関係がが損なわれるとしてビジネス界が反対していた。

おさらいです:このシラクさんがドイツ=シュレーダーの賛同を得て統合欧州超大国を構想したEU憲法が2005年オランダとお膝元のフランスの国民投票で否決された。まだ審議していなかった国もあったが、フランスがダメならもう意味がない。頓挫した。ベートーベンの第九=歓喜の歌をEU歌として華々しく出奔したのでしたが、あれ以来シラクさんはアウラを失いました。

そのため今回の議長国であるドイツ=メラケルさんが代案として各国が受け入れられるようガタっと落としてウスめた条約を作成した。この新条約がダメならEUはもうおしまいというくらい瀬戸際のサミットである。会議2日目の晩餐の席に改訂ドラフトが配られ、新条約は加盟国に適用されるが、イギリス国内法を拘束するものではないと特例免除オプションが記されていた。このサミットが最後の国際舞台になるブレアは素晴らしい花道をメラケルに作ってもらった。

また先に、ブレアを信奉するサルコジからは、持ち回り議長に代わって新設する専任EU理事会議長に推薦されている。

●冷遇されたカチンスキー
ふたつめ、メラケルが切ったのはポーランド。新条約は27加盟国の人口比に応じて投票数を配分する。するとドイツが有利な事は言うまでもない。ポーランドは以前からこの配分法に反対であったが、カチンスキー首相は(兄が大統領、弟が首相)は『ナチスに殺ラレていなければ倍の人口がありドイツに匹敵する』と、へ理屈で対抗した。どこかの反日と欧州戦争被害国の反独には共通項がある。アホらしいと総スカンだったのですが、メラケル・ドイツとしてはナチで言い合ってはソンですから黙っていた。ところがこの配布された改訂案にはポーランドを除く26カ国による政府間協議を継続する、とある。

メラケルさんはG8の環境テーマでは『もう充分聞いた、NoはNoだ』と不機嫌なブッシュに『待ってくださいよ、これがどんなに大事な今日の問題か、あなたわかってるの!』と食い下がって国連動議賛同をとりつけた。カチンスキーとの話し合いの様子は伝わっていないが、妥協の接点がなかった。ポーランドへの言及がなく、いきなり『ポーランドを除く26カ国で』と書かれている。グチは言わないメラケルさんらしい。サルコジとブレアが結局ポーランド復帰を表明した。カチンスキーはいづれ歩み寄ると思う。(了)



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