安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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フジモリ氏、参院出馬か?
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〈 2007年 6月 21日 木曜日 )


●ペルー警察のお尋ね者フジモリ
アルベルト・フジモリ氏が参議院選出馬を思案しているという。日本の政界に出ていかなる政策をお持ちなのか、考えるまでもない奇想天外なおはなしです。思案するまでもなく丁重にお断りするのが前ペルー大統領の誇りと矜持。そう思うのですが、フジモリさんはそういうモラルがまるでない。自由で何事にもとらわれない人と言えばカッコよいが、ワイロ、政敵殺害命令、電話盗聴、秘密警察創設など、強権独裁者であり、ペルー警察のお尋ね者である。

しかし原住民の支持を伸ばしたフジモリ大統領によってはじめてペルーの治安が安定し、経済成長をもたらした。そういうプラス面は弱小国の人権にヒステリー反応をおこす欧米の政治家・ジャーナリストの声ににかき消され、マイナス面だけが強調される。フジモリ氏が第報量在任時代にもう少し親米であれば非難は避けられただのだが、そうするとペルーでの支持基盤を失うので出来なかった。

●リマ大使館人質事件の恩人
マイナス面は日本で充分に報道されていない。それは征服者であるスペイン系の首班が続いたペルーに初めてスペイン系ではない日系移民の子が政権の座につき、加えて首都リマの日本大使館人質事件をフジモリ大統領が奇襲作戦で全員救出された恩があまりにも大きく、フジモリ批判は内実を知る特派員も口を閉ざしたためと思われる。この事件は右往左往する橋本日本政府のふがいなさに比べ、きわだった救出に日本全土が感激したものです。石原慎太郎氏がフジモリ氏を真のサムライと賞賛していました。でもこの作戦は日本に内緒、外交ルールを無視して完全な秘密のうちに一ヶ月地下トンネルを大使館床下に掘って特殊部隊が突入し、犯人を皆殺しにする作戦である。

日本政府の許可を得ず、日本大使館内に床下から突入するなんていう活劇は朝飯前のフジモリ氏である。このとき投降した犯人25人が皆殺しにされたが、その命令を出したのはフジモリ氏である。氏は大統領権限を強化するためいわば自分の政府にクーデターをおこして憲法を変えた豪腕政治家、民主主義のルールなど知った事か、良いと信じる目的のためには手段を選ばない。また野党を黙らせるため側近情報相を通してゲンナマを配った。その現場を写真に撮られたフジモリ氏はAPEC国際会議にかこつけて出国し東京へ、東京からファックスで大統領辞任をペルー国会に送付した奇策とサプライズの人。

どうも前置きがながくなりましたが、この人は生まれたときに日本の戸籍に登録したままなので、日本国籍があるといえばある。また日本政府から亡命者と認定され自動的に日本国籍が与えられた。日本はアメリカと違って成人の二重国籍を認めていない。当地でもノルウェーと日本の二重国籍がバレると、どちらかに選んでくださいと丁重な知らせが両国から来るのですが、フジモリさんは、特別扱いですね。

●フジモリさんを庇った小泉首相
小泉さんは日本とペルーの関係が少々悪くなっても心酔するフジモリ氏を守る義務がある、と引き渡し要請に応じなかった。それはそれでスジの通った対応です。だが、フジモリ氏は日本政府に一言の相談も通知もなく、出国しちゃった。再度ペルー大統領選に出馬するべく無断出国したものの勝算の夢が狂い、チリで足止めを食らったあげく拘束され、もう2年近くチリでハウス・アレスト(自宅軟禁)の身である。いまさら日本政府が義理立てする必要もないので、参議院に国民新党から勝手におやりなさい、出馬するならだれも止めやしない。

国民新党の亀井幹事長はどんな人なのか、この人の長女さんがやはり参院選に立候補している。フジモリ氏の長女ケイコさんも前回父に代わって大統領選に立候補したヤリ手でした。自慢の娘がいる共通項はあるが、政治手法に共通点はない。亀井氏はひょっとしたらフジモリ氏を軟禁から救い出すのが目的なのでしょうか。当選したとしてもチリから出国は許されないどころか、ペルーに戻されて被告席に立たされる日を待っているフジモリ氏であることを先刻承知とおもうのですが、もし本気なら呆れたスタンドプレーです。

●Ex presidente Alberto Fujimori
リマの新聞は多数ありますがすべてスペイン語ですからフイモリと発音する。なんて偉そうに言っても読めないのです。が。フジモリ氏のニュースはどの紙も派手に扱かっており、察するに好意的でもないが糾弾する雰囲気でもない。フジモリ氏は前任のガリシアを破って大統領に当選した。いまそのガルシアが再び政権を奪取し、反フジモリを強めているがガルシアの経済政策が軌道に乗らず人気が落ちているせいか、この報道ぶりはフジモリ氏の裁判にプラスの影響がある。とすれば亀井氏の要請は座布団3枚の秀作だと思います。

最後にフジモリ氏は出馬を受諾するか、当選確実なら出馬、落ちたら境遇はいまより悪くなるので不確実なら立候補を辞退する。(了)



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