安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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墓穴を掘ったハマス
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〈 2007年 6月 18日 月曜日 )


パレスチナ動向を続けます。西岸では予想通りハマスメンバーが無抵抗のまま苛められてカタがつきました。ガザと西岸あわせて死者が200名ほど、これで両派の抗争が収まったのはヨシとすべしでしょう。

●金づるを失ったハマス
ハマスメンバーを除外したアッバスの緊急新内閣が発足。と同時にアメリカが経済制裁を解除し、アッバス政権への財政援助再開を決定、旧連立政権に援助していたEU、国連もアッバス新政府に支援を継続する。ロシアもアッバス新政府を唯一のパレスチナ政府として承認した。これでパレスチナ問題を討議するカルテット(パウエル前国務長官がつくった4者協議)がファタ支持で結束。加えてハマスを支援していたエジプト、リビアもアッバス支持を打ち出した。もはやハマスにはビタ一文渡らないと前に書いたとおりです。

ハマスのガザ乗っ取りに「してやったり」、ほくそ笑みを隠したアッバスですが、イスラエルは隠しきれないですね。オルメトはさっそく親米新政府に和平交渉再開を促し、凍結したままのパレスチナ関税返戻金を支払う意向。おそらく来月ブッシュとの会談で正式にきまるだろう。

さて、アッバスとオルメトはハマスが牛耳るガザ地区をどう料理するか、エー、よそものには興味津々であります。新政府はハマス武装派を非合法、取り締まるという一方で、パレスチナ統一を最優先課題にしている。アッバスの対ハマス措置は従来通りであり、ガザへ先制攻撃する可能性はは殆どゼロである。いまガザからイスラエルへ通ずる出国トンネルは西岸へ避難する市民が殺到するほどではないが出国審査に並んでいる。衝突が起こるとすれば、避難民が一段落したところであろう。

●ガザの死活を握るイスラエル
地中海に面するガザ地区は大型船舶保有が禁止されているので、出口は漁船かイスラエルの関所ひとつと、国境警備の目を盗んでエジプト側へ脱出するしかない。大部分の食料とガソリン、電気はイスラエル国境の関門を通してくる。いまガザでは市民がガソリンの買いだめに走っているが、石油、食料、電気をイスラエルは止めないまでも厳しく調整するだろう。しかも新政府は更迭したハニヤ首相の旧政府に属する資金を凍結します。「ガザを殺すに刃物はいらぬ、石油の十日もきればよい」というわけです。

四面楚歌のハニヤは『軟化』しているが、武装派はイスラエルとエジプトの国境に部隊を展開、ファタ本部から奪った闊達な武器弾薬がある。いまイスラエルが怖れるのは自暴自棄になった彼らがカッサムロケットで雨霰とイスラエルを、また西岸のファタを攻撃しないか。

●イランとシリアの影
それだけなら武力壊滅はいともたやすく儲け物なのですが、心配なのはイラクで力をつけたイランとシリアにいる反米反イスラエルのシンパがどれくらいハマスをバックアップできるか見極める必要があり、作戦をシッカリ立案しなければならない。レバノン侵攻の二の舞は許されません。今日、レバノン側からイスラエルにカチューシャが撃ち込まれた。ヒズボラではなく、どうやらレバノンにいるパレスチナ武装派の仕業らしい。が、イスラエルは反撃を控えた。イスラエルだって和平を待ち望んでいるのです。いまのオルメトは挑発されてもガザ攻撃に慎重に成らざるを得ない。(了)



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