安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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グリーグの『顔』、写真と肖像画
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〈 2007年 6月 6日 水曜日 〉


●レンバッハの描いたグリーグ
再出発を誓った二人のイタリア旅行は無地の親友フランツベイヤーが間に入ってお膳立てした。ニーナを伴ってベイヤー夫妻がライプツィッヒでグリーグと落ちあい、イタリアに行く前、一緒にアムステルダムへ旅行した。ローマで写実的な古典的ポートレートの第一人者フランツ・フォン・レンバッハFranz von lenbachに描いてもらった淡彩の肖像画がある。

ドイツ人のレンバッハは当時の有名人を多く描いていて、イタリでもパリでも活躍した。ビスマルクの肖像が美術本によく見られる。またミュンヘンにある『レンバッハ・ハウス』は彼の邸宅を美術館にしたもの。

ニーナの写真はいつもニラムような鋭い視線だが、レンバッハの描いたニーナは大きい瞳と優しそうな微笑みに満ちている。ある日本人は小沢征爾みたいと評した。そう言われればたしかに小沢征爾を女性にしたようなおもむきがある。とにかくこの絵はニーナのお気に入りになった。が、ペアにして描かれたE.グリーグの表情は神経質でトゲトゲしく、絵の途中で断った。未完のまま残された肖像画を買い取って居間にかかっていたがいま博物館にもコピーが展示されている。

●グリーグ落ち込み時代の肖像
両親が立て続けになくなった1875年から徐々に始まった芸術的スランプ、1884年の家出と再出発を賭けたイタリア旅行出発の頃のグリーグはやせこけて頭がボサボサ、神経の病を映している。傑作だと思う(左の未完スケッチ)。というのは余り知られていないがレンバッハは後に未完のスケッチをもとにグリーグの肖像を油彩に完成したものがレンバッハ・ハウスに展示されている(右の油彩)神経症はとれているがどこか嫌悪な表情で、それよりもグリーグに似ていないのが頂けない。グリーグ好きにはあまり喜ばれていないのか、我が家にある当地発行のグリーグ本各種に載っていない。

二人の間は小康を保つようになり、ニーナさんも次第に落ち着いてきてグリーグと一緒の時間が多くなった。グリーグ60歳の還暦祝いの写真ではフックラとした柔和なとてもよい顔になりました。体重もふえ大きい頭にふっくらと頬がふくらんでいる。60歳にしてはあまりにも老けすぎだが豊かな白髪と口ひげがキマった立派な顔である。アインシュタインと間違う人、マーク・トゥエインじゃないのと言うアメリカ人がいるが、いいえ、元祖はグリーグ、グリーグが先輩なのであっり、正しくはアインシュタインを見てグリーグのようと言うべきなのです。


グリーグが亡くなった明治40年には日本でも写真館が各地に出来ていた。晩年のグリーグの立派な顔を撮りたい写真家が、ヨーロッパ各地から「トロルの丘」を訪れた。そおためグリーグほど多くのモノクロ写真が遺っている同時代の差芸術家は珍しい。(左はその一枚)。またグリーグの友人で高名な画家であったヴェーレンショルドが折々に描いた鉛筆スケッチ(中)がグリーグの「人」となりをよく伝えている。右は彫刻家ヴィークが作った実寸大の銅像。



Pnorama Box制作委員会

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