安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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ブレアからブラウンへ
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〈 2007年 5月 18日 金曜日 〉


●ローズガーデンのお別れ記者会見
朝日をあびて、ブレアはホワイトハウス・ローズガーデンでブッシュと最後の記者会見を行い、互いに10年、意見の相違はあれど、国際社会をリードしてきた親密な雰囲気が清々しい会見でした。イラク戦争の擁護をこの二人に揃ってやられると、国際トップ記者たちも拝聴を余儀なくされるのか、おとなしかったぞ。

ウルフォヴィッツの辞任発表がこの記者会見のあと夕方にありました。ブッシュは問われて「こんな結末になって残念だ」と言ったのに居並ぶ記者さんたち今日の話とは思っていなかったようです。ライブで見ていたわしもピンと来なかった。

ひとつ、ブレアがイジワルな質問に答えた笑える場面:
"In any part of Europe today, if you want to get the easiest round of applause, get up and attack America," he said. "You could get a round of applause ― you attack the president, you get a …"
「欧州の何処であっても、拍手が欲しければアメリカ攻撃を一席ぶてば大受けします。大統領を攻撃すれば……」
"A standing ovation?" Bush interjected, to laughter.
「総立ちで拍手?」ブッシュが笑って茶々を入れる。

●ブラウン新党首の政治手法
ブレアはあと40日で辞任する。後任のG.ブラウン財務相が対立候補のだれひとり規定の推薦数が集められず無投票で労働党新党首に選任された。90%の支持である。イギリスでは最大与党党首が自動的に首相に就任する。ブラウン財務相は新政権発足に際し、事実とされるふたりの密約で次はブラウンと決まっていた。ところがブレアが10年も長期政権を保持し、お鉢がなかなか廻ってこないのに、ブラウン財務相はじっとガマンしてきた。そういう鈍重ともおもえる我慢強さがある。

一方でブラウンは話し合いをろくすっぽせず、仲間内で独断する政治手法が与野党から非難されてきた。成果としてはインフレと失業率の抑制、最低賃金法など成功したが、知らぬ間に各種の解りにくい税が新設された。これは北欧でもそうで直接給料から差し引かれない諸々の手数料的税があり、騙された気がするものです。

●国内課題が主眼
ブラウン財務相は英銀の独立性をいいながら、公定歩合の操作、金融政策を完全に掌握しその秘密主義によって野党からスターリニストと野次られた。その張本人が、17日、新党首初のスピーチで「最良の政治とは人々の声に耳を傾け学ぶこと」と正面からヴィジョンを切り出した。この人は総選挙まで2年間の繋ぎと、今はそう見える。イラクは出来るだけ早く撤退して、教育、住宅、医療などの得意な国内問題と憲法会各草案作りが主眼点。米との特別な関係は維持すると答えている。いまは引っ込めたが、一事はポンドをやめてユーロに賛成していました。フランスのサルコジとは性格がまるで違うのに素晴らしくよい。

●ゴシップ、ブラウンの家庭
新内閣の顔ぶれ予想をと思いましたが聞き慣れない人物を羅列しても興味うす、かわりにブラウンのゴシップといきますか。

ゴードンブラウン56歳、スコットランド訛りがやや聞き取れる。エジンバラ大学出身。10代から労働党員で政界一筋の人。父親はスコティッシュ公聖会の牧師で本人も選任牧師の資格を持つ。長らくよくもてた独身でしたが社会福祉かなにかの中堅女性官僚に4年間言い添って結婚。最初の赤ちゃんは早生時児でゴードン父さんに抱かれて死んだという。そのあと男の子が二人できたが、一人は長生き出来ない珍しい持病が判明。こういう家庭の不幸を他人に気づかせないところは立派だなあと思う。

ブレア夫人はあのとおり変わった人でしたが、主人にべったりの態度は微笑ましくありました。片や、ブラウン夫人はインテリでおとなしそうなタイプ。ブラウンがうつむき加減で相手を凝視しないクセは、子供の頃に左目をラグビーかサッカーで負傷したためです。(了)



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