●イスラム的弁証法
イランの出方はわからない。水曜日、英海兵隊員と船員15人が予告なしに即時解放されたのが、前日にいよいよ交渉が始まるとコラムに書いた数時間後です。わたしはもちろんイギリスの評論家諸氏は軒並みしてやられたわけですが、イチバンビックリし、そしてホっとしたのはブレア首相でした。
アフマディネジャフ大統領が大勢の記者を集めて恩赦声明を読み上げるのを同時通訳の声で聞いていると、独りよがりがなことよ。野党がいないとこうなります。イスラム予言者の誕生日とイースターに英国民へのプレゼントなんてのはまだ可愛げがある。へーっと思ったのは、「子持ちの母であるファイさんものようなな女性を戦地に送るイギリスには家族愛がないのか」と、偽フェミニストぶりを発揮した。
当地ノルウェーでは女性の兵士を男性と同数にまで勧誘したがっている大臣がいる。国防大臣は前の保守政権でもいまの左派連合でも女性ですぞ。警察官にもミリタリーにも女性は必要。ですが男性本位のイスラム社会では犯罪にみえるらしい。
●釈放決定はイランの国内問題
イギリスはイランが理由付けに言うように、越境を一度も認めてはいないし、イランも示せる証拠書類をもっていない。交渉呼びかけの書簡にはイギリス側代表の名前とともに、将来の侵犯を防ぐ議題が書かれている。また、月曜日にブレア首相の外交問題補佐官Drがラリジャニ治安事務局長(新しく核問題担当になり、モタツキ外相より実務的)と直接電話で会談したとき、相当な歩み寄りがあったといわれている。
だが、イギリス側が越境を認めた事はなく、複数の対話チャネルで不正確な通訳があった事も考えられる。態度が変わったのはひとえにイラン側の国内問題で、米の動きを懸念する穏健派がハードライナーのアフマディネジャフを抑えた.そう言う見方が妥当と思う。
解放発表の日、ペルシャ湾に入った二隻めの米空母は湾外へ退いた。これで穏健派が力をつけてくれればいいのだが。さて、解放された男子全員が帰国に合わせて出来合いではない仕立てのスーツをあてがわれた。すると3日前くらいから寸法をとって作りはじめないと間に合わない。なお、ネクタイは欲しくてもテヘランには売っていないそうです。さらにお土産バッグをアフマディネジャフ大統領から直々に貰っている。すべて、イラン宣伝作戦の茶番劇に利用された。ただしイランへの好感度はますます落ち、宣伝が失敗だっことにと気がついていない。(了)