●合意の暫定性
1日遅れで5日目にもつれこんだすえ、暫定合意にこぎつけました。ヨンビョンの核施設停止/封印と引き替えにマカオの凍結口座を半分は解除と重油5万トン支援を第一歩に、そこから先は日程のない予定にすぎない。この合意文書はあくまで暫定、米がtentative agreementと呼び、北朝鮮が重水炉停止をtemporaryとしているように暫定合意なのです。
ヒルズやライス、ブッシュは最初の一歩が踏み出された、イランも参考にせよと自画自賛ですが、北の第一歩は右足か左足か知りませんがまだ後ろに重心がかかっています。実用面では不要のしろもの、どっちみち電力生産に役立たない寧辺の古い核施設停止を高く売りつけた北は、次のステップ『施設解体』に応じるだろうか。貯め込んだプルトニュムの廃棄という2歩目はもっとむづかしい。さらに北部の複雑なトンネル内に隠されたウラン濃縮施設や未知の核兵器を廃棄解体するとなると、正日体制のもとではまた騙されそうとおもわない?
●二匹目のドジョウ?
米はカダフィと同意した施設の完全放棄と解体にならって、北の独裁者も同様の決定が可能とみたようだが、いつも柳の下にドジョウがいるわけではない。
クリントンの時は軽水炉を見返りにしたが、この先、建造に何年かかるかわからないような軽水炉はもうどうでもよい、手っ取り早いエネルギーの現物支援である。しかしこの暫定合意の全容はクリントンが94年に合意した内容と基本的に同じ、13年前に返ってやり直しですから、北のゴネ得が通じた。国家が必要とする200万キロワットの電力に相当するエネルギーをタダで貰える国なんて聞いた事がない。それなのに外交の勝利というブッシュのコメントはナンですか、想像以上にイラクとイランに窮しているのですね。
ラムズ去り、ボルトンが去ったあとのヒルズは『隠れデモクラット』みたいなもの。
● 合意の周辺で歩き出すメリット
とはいえ、第一歩でも周囲に与える影響は無視できない。かげろうであっても国交回復の兆しは、手ぐすね引いて待っている世界のビジネス戦士たちが北を孤立させておかないだろう。『トリポリ参り』のあとは『ピョンヤン参り』。経済ドジョウはいつもいるようです。(了)