安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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戦略としての平和国家、ノルウェー
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〈 2007年 2月 9日 金曜日 〉


●国際危機で黒字が増える国
ノルウェーは平和国家、福祉国家と世界から見られている。しかしその国が、世界中で起こる国際的危機、自然災害、軍事的紛争、が起こるたびに大もうけする。奇異に聞こえるかもしれませんが、国際的危機はとにかくノルウェー経済に有利に働いてきた。経済アナリストの意見は総じて『危機で稼ぐノルウェー産業』で一致しているものの、歓迎しているのですね。一筋縄ではいかない。政府にとっては隠しておきたいプロセス、右・左にかかわらず暗黙のグローバル戦略です。

グローバリゼーションによって失業者が急増した国、家畜の病気で畜産業が大打撃を被った国が多くあるなかで、ノルウェーの状況はなぜか安心、どこ吹く風といった他人事でその分輸出が増えるのでした。当地、第一保険のチーフ・エコノミストであるマグヌス・アンドレアセンが最近の事象に合わせて言ったことをもとに書いておこう。

●鳥インフルエンザで売れる養殖サケ
イギリス最大の七面鳥飼育場がH5N1型ウイルスに感染し、16万羽が処分された。イギリスの七面鳥肉は大部分がこの会社の生産だったから、イギリス市場から一斉に消え、鶏肉まで売れなくなった。

少しテーマから逸れます:感染経路は渡り鳥といわれ、当地にも渡り鳥は来るのですが、当地では死んだ渡り鳥を見つけたら保健所に連絡する慣習があるようで、これまでのところ鳥インフル菌は見つかっていない。寒い所だから企業養鶏場は暖房室内型、野鳥との接触はない。みなさん相変わらず食べている。農家が戸外で有機飼育しているにわとりの卵を売っている店があったが、これが時々買えなくなったくらいだ。

さて、鳥インフルになれば鶏、カモ、アヒル、ターキー、など鳥ならすべて売れ行きが落ち、魚が増える。すると養殖サケの輸出が増える。ヨーロッパのどこかで鳥インフルが出るとノルウェーのサケ需要がヨーロッパで急上昇、値段もあがり利益率がよい。おなじことは欧州で狂牛病が出た時もサケが売れた。そうやって残り物の冷凍サケが棚さらいできるからウマイ話である。昨年は一時的にロシアがノルウェー産さけに重金属が含まれると難癖をつけて一方的な輸入禁止措置をとったが、この1月はロシア向けが記録的に増え、しかも鮮魚の空輸が人気、あちらでも寿司が流行っているらしい。

●気候温暖化は北海漁業を活性化する
グローバル温室効果が地球に良かろうわけはないのであるが、ノルウェーには漁業のルネッサンスをもたらすと分析されている。ノルウェーは千年の歴史をニシンとタラの漁業で生きてきた国だ。このニシンとタラ資源が海水の温度上昇で回復傾向にあるという。業者は今年の漁獲予想を3000億円以上と見込んでいる。

● 石油・ガス輸出国に転げ込む利益
昨日は米の海上リグ火災でピっと北海油田の原油があがりました。中東などの国際危機で上昇する石油価格は石油・ガスの輸出国であるノルウェーの金づる。他人の不幸に乗じて労なくして利益を上げる。何もしなくても純益が10年前の3.5倍になりました。市場経済とはいえ、不公平でありましょう。また、海運国ノルウエーはタンカー輸送でも一稼ぎしています。中国の産品が雪崩のように輸出され、国によっては災難だろう。ノルウエーにも中国製が氾濫しているが、しかしメリットのほうがはるかに高く、災難ではないのです。経済的な摩擦による反中感情はまるで見られない。(了)



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