●財政均衡
一期目のブッシュ政権発足時には黒字であった財政を取り崩し、双子の赤字が言われて久しい。例年、増税なしの財政均衡を教書に盛り込んでいるが、よく改善された実績はない。貿易赤字はやっと減ずる傾向にあるが、財政は悪くなるばかりです。今回は二期目がおわる2009年に半分まで赤字を減らし、昨年の教書から3年前倒しして5年でトントンにする。もちろん増税なしで行う。次期大統領にお荷物をつくって、共和党席からさかんな拍手、いい気なもんですね。
予算外に特別会計があり、災害支援や文化事業、さまざまな一事しのぎの政策に用途を定めてたイアマークつきの支出がある。これは委員会にまかされ、議会の承認が不要、90%は大統領の署名なしに通過する。この支出がどんどん膨らんで13000件、180億ドルとブッシュがそういうのです。このイアマーク支出を白日の下にあきらかにして今年度のうちに半減すると、けっこうな目標であるが、ブッシュ自らが決めたイアマークの額はいくらあったか、またこれまで放任していた責任はないのか、ツッコミたい。
増税をしないことで最も恩恵を受けているのは裕福層であり、リッチから取って社会福祉に向けられる税収がない。失業保険や最低賃金法は欧州や日本と比べて貧弱であり、社会格差がひろがる米国で、教書演説には『社会格差』という言葉が一度も発せられなかった。
●保険会社が儲ける医療制度
米の医療保険は基本的に民間の保険会社がおこなう。4700万人のアメリカ人はなんらの医療保険にも加入していない。で、この人たちが "Affordable Choices" (手頃に選べる)保険に加入できるよう連邦補助金を自治体に配分する案を担当相に指示した。こうやって保険会社が儲け、その利益をザイテクに狂奔する様子はバルブをおもわせる。
●低賃金雇用企業が儲ける移民政策
不法移民取り締まるのは密輸を取り締まるのと同様、当然シッカリやってもらいたい。一方で国外から農作物に従事する労働力を合法的に認める。そうでもしないと米の農業は果樹産業はなりたたないので、それはよい。しかしブッシュはいわないが、彼ら季節労働者には一般市民がもつ基本的権利がない。低賃金で雇う農産物経営Agribusiness(農産物経営)を保護する政策であり、米農業の強い競争力の陰で非人道的な構造がある。当地でも外国人労働者の賃金が不法に安い実態が暴露されては問題になっているが、米では当局が雇用者側に一任しているので不法もへったくれもない。
次回はブッシュのエネルギーと地球温暖化政策について。(了)