●暴政、最悪の独裁者たち
ABCテレビのブライアン・ロスがニュース番組でインタビューし、ワースト5は誰か5番目から上に向かって質問。映像から概略速記した答えをその順序にそって、また氏の出版物から補説し時事的な私感もまじえてご紹介します。(映像はABC放送電子版,ロス氏のInvestigating Teamからアクセスできます)なお、ワレチンスキーは氏が編集主幹をつとめる雑誌『パレード』2006年1月号でワースト10を発表している。そのときの順位からことしは、死亡したウズベキのカリモフが消え、昨年はおとなしかったミャンマーのタン・シュエやジンバブエのムガベがワースト5から落ち、胡錦濤が 返り咲き、イランのハメネイが浮上した。
まずワレチンスキーによる独裁者の定義:
国民の生活を専制的、恣意的に規制するに一国の首長、その地位は法的手続きよって解任できない。最悪の独裁者とは 酷い人権侵害、虐待にあり、このランク付けは、国際的な人権擁護団体がそれぞれ発表しているレポーとを参考にした。カダフィとムシャラフすでに一昨年トップ10から消えたが、これは他の独裁者がより悪くなったためにすぎません。( )内は2005-2006の順位。
#5 アブドラ国王、サウジ・アラビア (5-7)
サウジは米と同盟関係にあり、豊富な石油に依存する西側はとかくこの国の人権に目をつぶりがち。国民は法的に全て政府公認のイスラム教徒でなければならない。非常に厳格なイスラムによる法律は女性の地位が低く離婚の場合母親は子供の年齢が男子7歳、女子9歳にたっすると母権を失う。女性は車の運転禁止。学校の教科書たるや身震いもの。全ての電話は記録され、カメラ付き携帯は禁止。公務員はジャーナリストや外国メディアの取材を受けてはならない。女性は公衆に顔と体を見せてはいけないことはよく知られているが、一緒に外出できる男は親戚に限られる。恋人じゃダメだからフツウの恋愛すらできない。
アブドラ国王は82歳、王位に就いたのは2005年だがファド国王が心臓マヒで倒れてから10年実権を握る。ただし西側首脳とは会えば柔和で物わかりが良く、おそろしい独裁者には見えないところがクセモノ。
#4 胡錦濤主席、中国 (4-6)
訝るより驚く向きも多い選択ですが、経済成長に関心が奪われ人権問題にめくらになっている。人権蹂躙の分類上、最多22の範疇で報告されているのが中国。民間TV、ラジオはなく、電話、ファックス、E-メールが監視され、手紙は当局によって検閲される。反体制者は政治犯として『再教育キャンプ』へ送られる。北朝鮮や、ソ連時代のグーラージュとおなじく強制労働にかり出され、その数、25〜30万人といわれる。西側から問題視される死刑の多さや処刑者の臓器密売などよりもっと酷い。刑事犯で証人喚問が行われるのは5%以下、有罪判決が99.7%。掴まったら最期、ロクな裁判も受けられず有罪にるわけだ。2008年のオリンピック開催用地とインフラ整備に40万人が汚職で目減りしたわずかな補償で家を去らなければならなかった。新興開発地で立ち退きにあった住民の騒乱は年に数百件が公式発表、実態は数千件か。胡錦濤は総書記、国家主席、党と国家の両軍事委員会主席という最高4権力を手中にした。靖国問題に独裁者の恣意的な面がよく出ている。
(3、2、1位は次回に続けます。今日はブッシユ。)
*David Wallechinsky
日本語訳は出版されていないが“Tyrants, The World's 20 Worst Living Dictators”(暴政、生存する世界の最悪独裁者20人)2006年5月出版、の著者。NBCのコメンテーターでもある。オリンピック歴史家で夏期・冬季開催ごとに出版されるオリンピック豪華本の著者として有名。そのほかベストセラー“The Book of Lists”や“The People’s Almanac”がある。サンタモニカと南仏プロヴァンスの自宅を行き来する。父は作家、シナリオライターのアーヴィング・ウォレイス。(Harpers Collins出版社の著者紹介、他による)
余談ウンチク;父の苗字Wallaceは移民官が適当に英語風に書き換えたため。本名がWallechinskyであることを発見した(さすが歴史家)息子のデイヴィッドが怒って本来のロシア名に住民登録を改めさせた。でも父は作家ウォレイスの名で通っていたのでその戻さなかった。そのため実の父子で姓が異なるのです。当地でも昔ロシアや東欧から移民した人でノルウェー風に改名している人がいるが、当人が改名を望んだケースも多い。初めて日本に滞在したノルウェー人はオランダ船でやってきたバルトルスーンと呼ばれるベルゲン出身の鍛冶屋さんで、家光将軍に仕えた記録がある。この名前も語尾の−senをオランダ式に−zoonと船員名簿に書き記していたのが原因。