安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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石油・ガス資源で威嚇する国家戦略
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〈 2006年 12月 27日 水曜日 〉


●石油資源の盗賊たち
アフリカ産油国では輸送管に穴をあけて抜き取るギャングがいる。補修してはまた盗むイタチゴッコを繰り返している。昨日、ナイジェリアの経済都市ラゴスで輸送パイプから抜き取りトラックでギャングが去った後、吹き出す石油の溜まりにバケツをもって市民が集まってくる。バケツでくみ出している間に火がつき、引火して辺り一面火の海になる惨事になってしまった。死者200人。

せっかく60ドル/bまで落ちた石油の値段に心理的影響があるかも。しかしこんなギャングのことよりプーチン/ガスプロムの資源暴力をのさばらしてよいのか、やるせないない。プーチンは資源を武器につぎつぎ勝ち進んでいる。CIS諸国にロシアが供給する石油ガスの価格をつり上げ、今、それほど西寄りでもないベラルーシ(白ロシア)が供給停止の瀬戸際である。アゼルバイジャンは何処まで抵抗できるか、交渉の期限切れ近くもう後がない。

●石油資源とロシアの国家戦略
事の始まりは民間国際石油の大手にのし上がったユコス潰しからはじまった。当初はCEO のホドロコフスキーの政治野望を断つのが目的とおもわれていたが、ユコス社をダミー会社を使って買い占め、国営管理下にあるガズプロムに渡ったことで、プーチンの目論見がそこにあったのかと、わかったときはおそかった。どうしてユコスが米や国際法曹組織に救いを求めてきたのに、ブッシュはタッチせず、欧州は指を口にくわえて傍観したのか。ユコスが民間のままなら、少なからぬ各国が資源を脅しにボッタクリされる被害にあわなかったのだが……

ウクライナのオレンジ革命によって、西側へ軸足をシフトしたユシチェンコはたちまち石油を断たれ、以後ジワジワとプーチンの力に手繰り寄せられた。結局プーチンから「ウイやつじゃ」といわれるようになり22日、プーチン直々がウクライナにきて、そこそこの価格で安定供給の契約が交わされた。

●脅しの新手、環境汚染
ユコスは脱税を理由に解体に追い込んだが、サハリン2では森林に及ぼす環境破壊を理由に持ち出した。資源調査からリグ建設、パイプ敷設まで、ほぼ完成に近づいた事業をガスプロムが乗っ取ってしまった。ロシアが環境破壊でイチャモンをつける資格があるか。あの国の古く錆び付いた油送パイプは国中で汚染を引き起こし、破壊され放置された森林や畑があちこちにある。昨年の事故ではあわやどこだったか大河の上流に流れ込むところだった。ロシア貨物船の海上廃油投棄はつとにしられている。そんな国がオペレーターのシェルに環境破壊でゴリ押しするんだからムチャだが、それを通してしまうのがロシア。

シェルだからこそ権益の一部(30%)をキチンと対価を得て譲渡できた。出資していた三井・三菱はシェルがいなかったらふんだくりされていただろう。また別件でロシアの資源に投資している企業、BPやエクソン・モービルもいろいろ新条件を突きつけられている。ほかにも金鉱開発に出資、開発を始めたイギリスの会社が権益剥奪の脅しを受けている。

●足下を見透かした脅し
バレンツ海の巨大ガス田『シュトックマン』の開発にノルウェーのヒドロ社が資金と開発に参加することが決まったものと和気あいあいとして準備していたら突如、出資が少ないので参加ならぬと断られた。国家事業であるゆえ権益は売らないが、技術支援や機器納入は歓迎するとムカツクことを言う。ヒドロは一社で巨大事業の大半にリスクをおかして投資できるほどの資力はない。そこを見越して追い出すのである。

拒否にあったヒドロはその後まもなくノルウェーのライバルだったスターツオイルと合併し、世界最大のオフショー石油・ガス企業となるのですが、ヒドロとしてはロシアのような国策石油企業に立ち向かえない限界をひしひし感じたにちがいない。(政府の了承待ちだが、合併を推進したのが最大株主・オウナーであり確実。)

石油のこととなるといくらでも話があるので、書き急ぎのあまり解りにくい作文になりました。ベラルーシ、アゼルバイジャン、グルジアに関しては次回に続けます。



Pnorama Box制作委員会

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