安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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独裁者ニヤゾフの死と後継のゆくへ
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〈 2006年 12月 24日 日曜日 〉


●米のおざなりな介入
前回の続き、「後継者を探る」ですがその前に米とトルクメニスタンの関係で付け加えておきたい。クリントンさんは誰にでも会う人ですからニヤゾフをワシントンに招いている。産業育成と軍備に支援金を拠出し、見返りに米の貿易振興局というのかにパイプ敷設の調査と出資をきめている。それがどうなったのか知らないが、カスピ海を横切ってトルコから欧州に引くEUの計画に引き継がれた。その間もロシアを牽制するニヤゾフの要請で軍備拡充に手を貸した。

タリバン退治にブッシュがアフガニスタン侵攻を決めたとき、周りのトルコ、経済制裁を課していたパキスタン、それとトルクメニスタンを味方につけるため昨日の敵も独裁政権もなんのその、見境なく資金を融通した。トルコの空港使用がどんでん返しで拒絶され、代わりにニヤゾフからトルクメニスタンの空港を使わせてもらった恩義がある。で、ラムズフェルド長官がトルクメンの首都アシガバートでニヤゾフと会見している写真は両者ニコニコなのである。

しかしご都合上の関係だけだから、空港借りの必要がなくなった現在は他人行儀だった。ロシアとて事情はおなじ。ガスが供給されているあいだは、ニヤゾフやその国のことに関心がなく、また外交関係も希薄だった。だからロシアの報道も国際メディアも一様に「突然の死」、「急死」という見出しをつけてポストニヤゾフがどうなるか驚き慌てているのである。

●米のおざなりな介入
さて後継者は、すでに死亡発表の翌日、21日に国の最高機関である(国会はニヤジフが形骸化)安全保障会議と閣僚の合議でこれからどうするか短い宣言文で明らかになったように、暫定的に副首相であるベルドイムハメドフ氏が大統領代行および軍最高司令官に選出された。これが第1項で第2項にアターエフ・オヴェズェルディ首相が大統領代行に就かなかったのは氏に対するは検察庁の捜査がはじまったため、とかいてある。宣言文はこの2項だけ。

ニヤゾフの家計と国家会計に区別がない。ニヤゾフ一党独裁の共産党は改名して正式には民主党とよぶ。閣僚もまた名前だけだが、この合同会議に名を連ねた者がニヤゾフの後継者候補とみてよい。

●独裁者は娘がお気に入り
まず選ばれた代行のベルドイムハメドフはニヤゾフの親戚関係にある。CISの独裁者に共通している大家族支配が行き渡っているので、彼のように腹違いの息子でも親戚関係は有利。ただし私腹を肥やす者も多く、実業家の息子ムラード39歳は外国知りで、父ニヤゾフから疎まれている。海外で教育を受けた者は公職から排除、帰国を許さない政策だ。独裁者の父と娘の関係は、サッダムやスターリンの例を引き合いに出すまでもなく常に良い。ニヤゾフの娘イリーナはモスクワにいて、ドイツ銀行に振り込まれる家計をつまり公金を取り仕切っているといわれる。

イリーナがプーチンの後押しを受けるようだと、後継者候補のトップだが、プーチンはしかし女性を起用しそうにない。次に、親族ではないが有力家系の出身で側近中の側近、公安警察長官のレゼポフががいる。合同会議に名を連ねた者10数人のなかから、名前はややこしいので省きまして、筆頭は国防大臣、外務大臣、国務大臣、それから順位はさがるが、首相を訴追した主任検察官などがいる。金色の回転するニヤゾフ像が引き倒される事態はおこらない。

●政体変わらず、ロシアと中国が影響力を競う
野党の巻き返しで混迷するなんてことはないとおもう。野党そのものがなきに等しく、パージされた多数の政治家や学者、医者の帰国は禁止されたまま、与党はニヤゾフの政策を引き継ぐと言明しているので、民主政体は期待できない。独裁から集団指導による独裁に移行するだけだ。中国国民が熱狂した毛沢東の時代のように、また金正日を拝して涙をうかべる北朝鮮の大衆のように、多くのトルクメニスタン人は真実、「国父」ニヤゾフの死を悼むのである。悲しいかな民主制度への時は熟していない。金色の回転するニヤゾフ像は安泰だ。

中央アジアは人種的に中国とうまくやっていけるし、実際ソヴィエト崩壊後はうまくやってきた。ニヤゾフは米ロから積極中立を図った代償に経済圏は上海機構に属している。中国よりが強まるか、ロシア寄りに戻るかが焦点。(了)



Pnorama Box制作委員会

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