安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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独裁者ニヤゾフの死と天然ガスのゆくへ
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〈 2006年 12月 22日 金曜日 〉


●中央アジアの金日成、ニヤゾフ
トルクメニスタンの独裁者・21年間鉄の統制を布いた終身大統領ニヤゾフSaparmurat Niyazofが、水曜日かその数日前、心筋梗塞で亡くなった。最近心臓発作があり要注意だったので、死因に憶測などない。ロイター通信によると、町では新年の飾り付けが撤去され始めた。

共産党が行き着く先を極めたのがニヤゾフのトルクメニスタンである。隣国の独裁者たち、ウズベキのカリモフやカザフのナザルバーエフより恐慌政治である。そんなわけで、小泉さんが中央アジア歴訪したときもトルクメニスタンだけは遠慮した。中央アジアの金日成と想像すればわかりやすい。禁煙、カーステレオ、オペラやバレーを禁止し、美女軍団がいないところなど、金父子も真っ青の独裁ぶりだ。都市、空港、港湾、軍隊、集団農場、工場、はては隕石の名前までに自分の名をつけているほど。巨大な金色の立像ほか肖像画が全国いたるところに数千枚も掲げてあるという。スターリンや毛沢東、サッダム・フセインがおこなった個人崇拝より凄まじいたカルトである。

●『国父』ニヤゾフは後継者を残さなかった
ニヤゾフは後継者を指名していない。自分が太陽なんだからどうして後継者がありえよう、とコメントしたロシア人がいるが、ウン分かりやすい。倒れたときの暫定後継者は人民議会(議員は全員ニヤゾフ支持者)の議長が就任するが、ニヤゾフが議長も首相も兼任していたのでいま暫定後継者が正式にはいない状態。とりあえず副首相ベルドムハメドフGurbanguly Berdymukhammedovが葬儀委員長を務める。閣僚と国家安全保障のメンバーが緊急協議して、この副首相が大統領代行もするらしいが、憲法違反なので就任式はやっていない。

ニヤゾフは独裁を維持するため、政治・外交・教育・文化なにもかもす独りで決めていた。他人を信用しない性格は7歳のときから孤児院で育った故か、少なからず影響しているだろう。毎月のように閣僚を交換し、野党のリーダーはことごとく刑務所入りか、亡命を余儀なくされた。いま残っている政治家は野党のみならず政治経験のない者ばかり、イラン、トルコも加わって中露米欧がガスの取り合いを始めたらどうなるか……一歩間違えば内乱のおそれがあると報道されるのはそう言う理由からである。

●ガス権益をもつロシアと中国のうごき
ガスプロムが権益をもつロシアは大物を派遣して政情安定化を目指すだろう。ガスプロムがウクライナに供給しているガスは大半がトルクメニスタンから送られている。ロシアはCIS諸国でロシアに次ぐ天然ガス埋蔵量をもち、世界5位のガス大国トルクメニスタンに実際依存しているのだ。わたしはラブロフ外相が葬儀にゆくとおもう。

おなじく中国もトルクメニスタン最大のガス田開発とその供給を受ける契約があり、どこにパイプを引くか計画中である。このトラの子の契約履行を確保するため、中露合同で介入する可能性が高い。もともと西側と米は、イランとアフガニスタンに接するこの鎖国同様の独裁国を戦略的にありがたい安定地域としてきた経緯があり人権非難を控えてきた。ま、ウワベの関係なので、EUが欧州にパイプラインを引く計画があるが、とても中露の介入に対抗できゃしない。中国は新政権が欲しがる物をなんでも、武器だろうが現ナマであろうが与えて新規のガス輸出を独占するように仕向けるのは明らか。米の影響力は弱く、トクをするのは中国になりかねない。

トルクメニスタンは貧しいばかりか、事実上共産制度にありながら医療制度が貧弱で結核とHIV感染が高いく、ドラッグ使用が蔓延し、自殺率も高い。平均寿命62歳、ニヤゾフは66歳だったから長生きしたほうだ。葬儀は24日、大半がイスラム教なのでクリスマスと関係ない。(続く)

次回は後継者はだれか、探りをいれてみたい。



Pnorama Box制作委員会

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