●デジタル・デモクラシー
ニューズウイーク誌がPeople to watch in 2007と題する記事で、来年の注目すべき人物21人を挙げ、そのひとりに松阪投手を選んだ。こちらは野球通でないわたしの守備範囲ではないのでヨコにおいて、これより先にタイムズ誌が恒例の特集『今年の人』について『今年の人はあなた』と決定した。
ノーベル平和賞は個人、関連する複数個人、組織や団体などさまざまで、タイムズ誌の「今年の顔」だって団体であってもおかしくない。しかし『あなた』と言われてもキョトンとするばかり、重ねて『ネット好きのあなた』といわれて身に覚えのある小生は胸が騒ぐ。そこで編集委員のグロスマン氏が冒頭で述べている文を読んでなるほどとおもった次第。
コンピューター、携帯やネットの普及とその社会的威力について、あるいは弊害についてもう充分に論議され、評価されあるいは批判されてきたが、利用者を一個の人格として捉えると国際的な影響力がめっぽうにつよい。ネットから生まれるデジタル・デモクラシーなんて概念も納得できるのである。
●編集委員グロスマン氏の文からほぼ全訳:
断っておくが、2006年に起こった幾多の事件は個々の人物に責任がある。イラクでの抗争はより凄惨により慢性化した。イスラエとレバノンの紛争に火がつき、スーダンに戦争がひろがった。北朝鮮の安っぽい独裁者は核爆弾を手にし、イランの大統領も核を欲しがる。一方、地球温暖化に対しては誰もなす術がなく、ソニーは満足できないプレイステーション3を作った。
しかし2006年を別の角度から見れば、新しいコミュニティー、協力体制がかつてないスケールで生まれた。宇宙規模的知識の一覧"Wikipedi", ミリオンチャネルのネットワーク"YouTube", オンラインメトロポリス"MySpace"など。それは少数者から権力をもぎ取り、無償で互いに助け合い、世界を変えるばかりか、世界の変わり方をも変えようとしている。
これらを可能にしたのが90年代後半のWebではない新しいWebである。この道具によって何百万という人々の小さな貢献が意味を持つ実体になった。Web 2は単なる新バージョンではない。実に革命的なのである。
編集済みのTVニュースを、バグダッドやボストン、北京からの生の情報でバランスを得られる。YouTube Vieoでアメリカンライフの後ろ側、しわくちゃの寝室、おもちゃの散らかった地下の娯楽室などはネットTVを1000時間見たってわからないだろう。見るだけではない。"Like"(ヴィジュアルショッピング)"Facebook"(なんでもリンク)"Second Life"(ヴァーチャルワールド、近々日本語版登場)、本の注文"Amazon"など、行動も含まれている。
わたしたちは爆発的な生産と改良をみているが、それはいま始まったばかり。
(残りは明日に続く)