●静かな街、イプスウイッチ
Ipswitchイプスウイッチといえばサッカーの『イプスウイッチ・タウン』とそのホームグラウンドがある通り『ポートマン・ロード』が代名詞になっていて、この辺りが赤線地帯であることもその方面の趣味人にはよく知られている……。であるからして、イギリスのメディアはいちいち詳しく報道しないが、ちょいと街の概観を説明すると：

ロンドンから北にケンブリッジがあり、そこから東の北海側に出るとハーウイッチとこのイプスウッチがある。平坦な田園風景に囲まれ、河口からちょっと上った所にある何の変哲もない人口13万の地方都市である。移民は多くないので売春婦さんたちは色とりどりでなくてイギリス人女性が立ちん棒して、客の車に乗ってゆく。

●ドラッグ常習者の悲劇
彼女たちは大都会の組織化された密入国女性や、逞しいアフリカ女性ではなく、ドラッグ常習者がドラッグを買うためのいわば独立個人業フリーランサーである。売春婦殺しの犯人にはもってこいの対象にちがいない。人口13万人なら需要20人くらい。あたしゃこの方面の相場は全く無知ですが、彼女たち常習者は1日邦貨にしてクスリ代に７万円要るらしい。で、お値段が1ラウンド1万以下なのでかなり重労働だわな。ま、地方都市だから高級コールガールは商売にならない。安く数をこなさねばなるまい。

殺された5人は、全部ではないが共通項として中高生の頃ドラッグを始めてめて断ち切れなくなった経歴がある。オスロではヘビーユーザーが盗みや売春をしなくても良いように無料で注射を提供する公共の場所がある。そういったものはイギリスの地方都市にはないようだ。

● Jack the strangler?
売春婦連続殺害ではその昔ディッケンズ的ロンドンを舞台にJack the Ripper『切り裂きジャック』がつぎつぎ5人をナイフで切り殺した迷宮入り事件が有名だ。今回の犯人はナイフを使わず首を絞めたり押し詰めたりする。Jack the Strangler『首絞めジャック』ですね。この犯人は計画的で犯罪学者の見方は５人の前にもやっているだろう、どこかで次の被害者が出るのは時間の問題、という意見で一致している。クリスマスまでに逮捕できるか、心配だな。（了）