安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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タリバン聖域を『暁の急襲』
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〈 2006年 10月 31日 火曜日 〉


●手づかずだった部族セミ自治区
パキスタンがタリバンの聖域と目されるMADRASSA(イスラム神学校)に『暁の空爆』を決行。ムシャラフは思い切った事をやりましたね。しつこくブッシュから圧力を受けていたのでしょうが、知らなかったな。このアフガニスタンとの国境地域は歴史的に部族のセミ自治になっていて、イスラマバード政府はなかなか手が出せないでいた。やれば、国境地帯の各部族とイスラム宗教に立脚する野党連合がムシャラフ打倒で結託し、軍はムシャラフ派と反ムシャラフにわかれて国内は暗い内乱時代に突き進む事態になりかねない。

●タリバンを聖域化したワリジスタン合意
ワリジスタン合意というのがある。今年始めに一部族(北東国境のバジャウル族、ペシャワールは隣接する都市)とパキスタン政府軍の間で成立し、バジャウル族は越境してくるタリバンをストップし武装タリバンの活動を禁止するとなっていた。今年の1月、ザワヒリ副官が民家での会合に現れる情報を得て米軍が『暁の急襲』を行ったが直前に逃げられ、犠牲者18人の大部分が民間人だった。あの事件の直後にこの同意が成立したのである。で、今回が『暁の急襲』第2弾というわけ。

●地盤を固めたムシャラフ
そりゃ、米の主権侵害だものムシャラフは困ってああいう同意で鎮めた面もある。ところがこの同意によってかえってこの地域がタリバンの聖域になってしまい、正式調印が遅れ遅れになっていた。で、米からものすごい圧力があったのだが、正直そうでタヌキのムシャラフは先の行動が読みにくい。びっくりしました。たしかに最近のムシャラフ地盤は揺るぎない絶対権力に立っている。
この日もプリンス・チャールスとカミラさんを迎えて余裕綽々どこ吹く風ですからね。尤も翌火曜日(今日の事)に予定していたプリンスのペシャワール訪問はキャンセルされました。余計ですがチャールスのスーツは仕立てが違う。身体にピッタリ、着こなしもいいしいつも唸っております。

●原理派過激分子を養成してきたイスラム神学校
さて、この神学校からイスラム原理過激集団が巣立っているのは周知の事実である。だいたい15歳から25歳の若者が寄宿し、軍事訓練が教科にくまれている。学校は離れて独立した建物なので民家への被害はなかった。神学校をテロリストのトレーニングキャンプ、神学生たちをアルカイダ/タリバン志願兵とみるか、あるいは住民部族のように犠牲者は無実の一般市民で攻撃は弁解の余地のない蛮行と糾弾するか、このギャップは永遠に縮まりそうにない。

30日夜明け、パキスタン空軍が戦闘ヘリで急襲した事件の片々を部族側の意見を中心に参考のためあげておこう:
▽ 死者役80名、殆どが吹き飛ばされているため認知は困難。
▽ 神学校はラマダンが終わり授業が再開されたところ。
▽ 野党リーダー(Qazi Hussain Ahmed)は30名が子供という。
▽ ワリジスタン合意を政府が破った。
▽ 政府軍8万人が部族地域アフガンとの国境地帯に展開。
▽ 夜中に襲うのはイスラムの教えと伝統に反する。
▽ 急襲は米軍が背後で指令した。政府が遂行したというのは反米抗議の全国的嵐を防ぐためである。
▽ 同日午後の追悼集会で1万人の会衆を前に演説したアルカイダ関連のリーダー、ファキール・ムハンマドは攻撃30分前に学校から避難、校長で過激教師のマウラナ・リアカト師は死亡。
▽ バジャウル地域、ラホールやペシャワールでは星条旗を燃やし、スローガンは"Death to Bush"。なぜかアンチ・ムシャラフの標語がない。(了)



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