安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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イラク政府と駐留米軍のいがみ合い
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〈 2006年 10月 30日 月曜日 〉


●血の10月と11月選挙
イラク情勢がどんどん悪くなると、米とイラク政府の間でいずれツミのなすり合いが始まる、これは当然考えられたことですが、実際に始まりましたね。名誉或る撤退のソトヅラを残していかに早いとこ切り上げるかに焦点が搾られてきました。しかし一週間後に迫った選挙まではStay the course(政策変更なし)を貫く。貫いて負ける。

だってこの月米兵が100人も死ぬ事態になって、駐留米軍に移動がなければブッシュ共和党を支持するのは難しい。いま1年以上先の撤退期限を示しても負けるので、どうせならドッシと構えて現政策を続行して負けた方がブッシュらしい。ラムズフェルドを擁護し、チェイニーを庇うブッシュを頼もしいと見る向きもあるはず。反面このところイラク人は毎月3000人殺されているが、アメリカ国民はどう思ってんでしょうか。

●米イ、政府間の食い違い露呈
ブッシュがイラク政府に示したのは治安回復のベンチマーク、目標期限であって撤退期限ではない。これでも相当にマリキ政府としてはアタマに来ているようで、駐留米軍に対する不満が24日、ケーシー司令官とハリルザド駐イラク大使がこの日程を年内にイラク政府と作成すると発表したとたん、『そんな約束はしていない』と反撥した。

シーア派のマリキ首相は、サドル師の民兵組織マハディ軍団の応援票で当選した人であり、宗派抗争でシーア武装派への対処が煮え切らない。で、アフガン生まれでスンニのハリルザド大使がシーア武装派を退治逮捕せよと突っつくのが気に入らない。新憲法に則して選ばれたレッキとしたイラクの首相に大使ごときが命令するとはなにごとか!『お前さんはP・ブレマー(暫定占領時の行政官)じゃない』。という反撥。ま、どっちもどっちだ。そこで、先日の米イ首脳ヴィデオ・テレ会談でブッシュがマリキをSovereign Leader主権国家の指導者として確認、協調してゆくことでを手打ちした。このTV会議には通訳だけでライス長官が出席していない。簡潔にしたかったのでしょう。

権限委譲しておきながら口を出しすぎる米軍、イラク警察・治安軍への装備支援が遅れがちなことは大問題なのですが、そのあたり米軍の認識が甘い。他国に駐留する軍の宿命かもしれないが、米兵のパトロールはヘルメット一つにしても多機能で通話装置、ライトに夜間望遠鏡などついている。何が入っているのか、大きなリュックを背負っている。小銃一丁のイラク兵と差がありすぎるではないか。

●イラクが対米テロ攻撃基地になる妄想
ブッシュはイラクが宗派間内乱の結果、イラクが対米テロリストの国となり、米本土を攻撃してくることを、本気かつ大まじめに怖れている。イラクでの戦いは『米国をテロリストから守る』ためという理由が常套句として用いられるが、果たしてそうだろうか。

ベトナムは米本土攻撃の基地にならなかった。ハマスもヒズボラも米本土を攻撃しない。タリバンもそうだ。イラクの宗派抗争似よる内乱から実権を握った最強武装派が、イコール米本土へテロを企てるだろうか。ブッシュは妄想に取り憑かれていやしないか。残り少ないネオコンだってそう思っているが、ブッシュ、チェイニー、ラムズフェルドはネオコン(転向保守)ではなく、アーチコン(根っからの超保守)なので方向転換がうまくできない。((了)



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