●底抜けのアホと罵られたブラウン財務相
紳士の国イギリスでも閣僚が同僚を『バカ』よばわりすることがある。いまに始まったことではないが、英次期首相と目されるゴードン・ブラウン財相がチャールズ・クラーク前内相に罵倒された。それもコテンパン'absolutery stupid'底抜けのアホとののしられました。
人気凋落のブレアが任期終了のまえに辞めるといいながら、いつ?との問いには言を左右にお茶を濁してきた。いい加減にハッキリしろって声が高まり、党内騒然となったものだから、先日ブレアは1年以内と一応の期限を明らかにしたのです。ムッ、そうするとサッチャーさんより長い英国史上最長を勤めた首相の栄誉にありつける……ってことだったの?
辞任時期の件だろう、ブレアとゴードンが官邸で会談。ダウニング10をニヤニヤして出てきたゴードン・ブラウンの写真が報道された。「進退は首相自身が決める事、わたしはそれを全面的に支持する」なんてしらばっくれた発言に、混乱の最中に何がおかしいかとばかりクラークさんは怒ったのでした。
それにしてもブラウン財務相は、何度もココというチャンスがあったのに、指導力を失ったブレアに反旗を翻す事はなかった。そこが歯がゆいと思う労働党議員は多い。ブレアが指導力の危機にあるいまこそ、ブレアに直ちに退陣するよう要求するべきだ。それができるのはブラウンしかいない。「なのにテメエは……」これがクラーク前内相の本意である。ブラウン氏のニヤニヤは、ブレアから禅譲の約束を取り付けた証左に疑いない。『みんなカンカンに怒ってるよ、こんなバカな、バカなことをやりおって、彼の行動は許せない』。あとは八つ当たり気味にブラウン氏の欠点、協調性のない性格 (control freak, ,totally uncollegiate) をあげつらっております。
●ブレア5月辞任説、それまでもつか?
クラーク内相はお手伝いさんのビザだとか、不法滞在者の送還ミスが原因で、それがどんな問題だったかもう思い出せないのですが、それでクビになった大臣でした。ブレアとブラウン両者への不満を代弁しているとみてよい。
FT、Guradianなど信頼できる報道では、来年2月に退陣表明、5月に党首辞任、6月党首選挙をしてバトンタッチという日程らしい。さて、それまでもつかな。アフガニスタンで英兵がどんどん死んでいる。EUがアフガン治安軍に増兵するかどうかで揉めているが、ブレアは増強するつもりだ。犠牲者は増えてもタリバンを根こそぎ掃除するなんてことはできっこない。ブレアへの風当たりが止むことはない。私の予想:クリスマスまでに辞任に追い込まれる。
しかし、ブラウンがもたついている間にも、強い候補が現れない労働党の人材不足が悩みのたね。一応候補はというと、元共産党のジョン・レイド。元郵便局員で労組リーダーのアラン・ジョンソンが頭角をあらわしてきた。前外相のジャック・ストローはイラクを引きずっているうえに議員の支持が少ない。トニー・ベンの息子で二世議員のヒラリー・ベン、といってもどなたさまか知らない、どうもみなパっとしない。
結局、次回の総選挙で保守党に政権を取られるのではないか、あちらはカリスマ性のあるデヴィッド・キャメロン党首の人気に勢いがある。結局ブラウンが継承しても、2008年の総選挙で労働党が負ければすなわち二人は共倒れ、野党に落ちる。そうなってからでは後の祭りである。ブラウンどの、ブレアに詰め腹切ってもらっていま行動をおこせ。それがブレアのためにもいちばん良い。ブレアファンとして願うのです。(了)