●『なぜならアジア人が多すぎる』
というのが、先週月曜日にモスクワ東部の市場に爆発物を仕掛けた若者の犯行理由だった。この爆発で死亡した11人のうち4人が中国人である。この市場は特に中国人経営の小売店が多い、いわばロスにあるチャイナタウンのモスクワミニ版である。昨日その犯人、20才の男二人と18才の男がやっと逮捕された。で、インターファックスによると犯人はモスクワのあちこちでこれまで少なくとも8回の爆破事件に関わっていたという。
ソ連崩壊後の混乱時代に育ち、まともな教育を受けられなかったこれらロシアの『失われた世代』の盲目的暴力に、ロシアの警察は取り締まりに熱心ではない。しかも裁判ではまことに寛容な判決になるため、人種差別暴力は野放し状態だ。日本人も殴られている。
数年前からアジア・アフリカ人など、カラードに属する人種への理由亡き暴力がロシア大都市や留学生の多い大学町で頻発するようになった。プーチンの故郷、St.ペテルスブルグが最も差別暴力が激しい。昨年だったか混血の少女が15-6才のロシア人グループにナイフで数十カ所刺されて殺された事件では、裁判官が犯人を「気の毒な少年たち」であったなんてすぐ保釈してしまった。お父さんが『私たちは気の毒でないのか』って、これはイギリス紙が書いていました。
●ロシアにおとなしい中国政府
今回のモスクワ青年だって、検察は人種差別が背景にある殺人罪で起訴しているが、殺意があったか立証は困難。こういう場合は中国が強く抗議して然るべき、と思いますよね。日本で同じ事件があったらどうなりますか。わたしは、中国の反応を楽しみに待っていたのですが、それが音無しなんだな。事件の翌日、人民日報の英語版をみると報道の鏡みたいな客観的報道に徹していて、「市場で爆発が有り、犠牲者の中に4人の在ロシア中国人がいた」。まったくコメントなしだ。そのあと続報があったのか、注意していたが見ていない。
中国はいつからか、何があってもロシア批判をやめました。ロシアも中国人不法移民が激増しているのに表立っては全く非難していないという奇妙な関係が続いている。要するに国民にはナイショ、人工的に作られた友好関係はいつか破れる。
ロシアは輸出の80パーセントが石油で残りは武器、工業製品や消費物資の輸出は皆無に近い。奇形の国であるが、石油輸出で稼いでいるので米に次ぐ大国と思っている。片や、中国は世界の大半の資源を確保した自分たちが世界No.2である、と信じ、世界に納得させようと躍起である。そんな中露の奇妙な関係にそろそろヒビが…… (了)