安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


-------- ----------------------------------
東シベリア・石油パイプライン
------------------------------------------
〈 Thu, 24 Aug 2006 〉


●ナプキンに書いたバイカルとナホトカ
7月のG8サミット、プーチン大統領が主催したバンケットで小泉首相が切り出したシベリア・パイプラインの話に、プーチンは傍らのナプキンにやおらルート地図を書いた。紙ナプキンじゃなくノリの効いた紋章入り白布ナプキンでしょうね。これ同席した外交官がニュース源である。

プーチンはヨーロッパルートの老朽パイプラインが事故続きで信用していない。バイカル湖が油濁汚染するような事があってはならないというので、バイカル湖の北を迂回してナホトカに引っ張るつもりだ。東シベリアのツンドラ凍土を全長4.400キロのオイル・パイプを引くのは大変な資金が要る。アラスカの凍土と森林地帯を縦断するパイプラインは1280キロで、費用は1兆億円かかった。シベリアパイプは4倍近い長さがある。費用が嵩みすぎるがいいのかな。

●ツンドラを克服する費用
当初、ロシア国営のパイプ敷設/管理社「トランスネフチ」は7000億円の経費を日本側に示して誘い込んだ。そして今、2兆5000億円かかると言い出した。加えて油田探しの開発と大型タンカーが停泊できるターミナル港湾建設もある。いくら石油が欲しいといえ、80%の建設資金を拠出して、資源管理にいっさいタッチできないとなればちょっと考えもの。日本海に引き込む石油パイプは、米やアジア各国にも開かれているので関係国が建設資金に協力してよさそうだが、いまのところ日本以外にお金を出そうという国はない。

中国は大慶に引く支線パイプの建設費全額を引き受けてトランスネフチと契約した。契約では2008年から毎日60万バレルが中国に送られる。この支線は短距離で、しかも大部分が中国国内を通るためロシアに得なビジネスではない。やはり日量100万バレルをナホトカから日本やアメリカに供給するのが有利なゲオポリティックである。国際価格でナホトカから中国へ売る方が利益は大きいのだから、プーチンは中国への支線をあとまわしにしても、任期中に日本の出資を確かにしたい。その焦りか、北方領土と絡めると怒るのだ。

●2兆円の石油バクチ
もしシベリア石油の埋蔵量が巨大で、原油価格が下がらないなら大枚2兆円でもペイする。そしてどうやら巨大な石油資源があり、原油価格は上がる一方なのですが……。安倍さんか谷垣さんか、次期首相が決断をせまられる大バクチです。(了)



Pnorama Box制作委員会

ひとこと言いたいなんでも・掲示板へ
筆者へのmailはこちらまで
HOMEへ戻る