安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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原油高の悪材料
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〈 Sat, 19 Aug 2006 〉


●原油高騰とガソリン代
ガソリン価格が140円/リッターになり、これがいま小康を保っている原油高(73/bあたり)から見て高いのかというと、これでも日本の石油企業は必至に抑えている。不服を言ってはバチがあたります。国際メジャーの生産大手や産油国が値上がり分丸儲けの莫大な収益をあげているというのに、消費者用のガソリンや灯油を売る小売業は歯を食いしばって耐えなければならない。航空運賃がたいして値上がりしていないが、そろそろ限界にきているようだ。

●先進国と途上国の差を反映するガソリン代
東南アジアやアフリカでは原油の国際価格に関わりなく国内消費については政府が補助金を出したり、産油国の中央アジアやロシアでは輸出価格と国内価格を別途に使い分けている。かとおもうと、原油高を反映してガソリン代を遠慮なく引き上げる小売業者のいる国が米や西欧に多い。当地、石油輸出国のノルウェーは原油と小売り共に税収が増えるので政府は対抗措置を逃げている。この1-2ヶ月は200円/リッターを下がったことがないのです。これら各国の石油政策は、市民生活と産業への影響の度合いにかかっているため、お国の事情によって変化する石油価格の相違を縮めることは不可能だ。

●市場原理、悪材料による原油高
さて現在、原油は決して不足していない。原油供給に少しでも不祥事が生ずると、それを悪材料にしてしまう完成した市場レールがあり、原油高という列車が走り出すのである。そして悪材料には事欠かない。レバノンは産油国ではないのに産油国のイランやシリアへの紛争拡大を懸念材料にして値上がりした。中東での紛争は必ずゲオ・ポリティカル・リスクを悪材料にしてしまうのです。また、南米産油国は国際供給に危なげがなくても、反米的政情がすでに悪材料となってしまう。悪材料探しは自由な経済活動の一環であり、容認するしかない

● 防げる悪材料、パイプ漏れとタンカー漏れ
1960年代から敷設工事が始まった長距離石油/ガスパイプラインは、老朽化が酷くなっている。ロシアがばルト海まで引っ張っている4800キロの長距離石油パイプライン、これはヨローッパへの最大輸出量を送っているパイプラインだが、油送管漏れ事故が頻繁に起っている。完成してから40年も経つと腐食で穴だらけ。そこをパッチして継ぎはぎだらけのパイプである。7月の事故で石油高騰を招いた。

アラスカの北海岸プルードベイに米最大の油田がある。ここから南岸のヴァルデスまで130キロをツンドラ地帯と森林地帯を横断する原油パイプラインは1975年に工事が始まり77年に活動を開始した。1989ヴァルデス港から西海岸へ運ぶタンカー、エクソン・ヴァルデス号が座礁して原油漏れとしては史上最大の海岸汚染を引き起こした。記憶されている人も多いだろう。2001年にはクマやムースを射ったつもりがパイプを貫通したのか、銃で撃たれた穴から石油が吹き出す大事故があった。そして今月初め、腐食による原油漏出がおこった。これで一時77ドル/bに急騰したのでした。

しかしパイプが老朽化しておこる腐食事故は人災、メインテナンスを怠って取り返しのつかない人災は防げるはずだ。(了)



Pnorama Box制作委員会

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