安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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航空10機の空中爆破プロット
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〈 Fri, 11 Aug 2006 〉


●世界中をアッと言わせるスペクタクル
イギリス主要空港からアメリカ各地に向かう米系の航空会社三社(United,American,Continental)の10機に液状/粘液状の爆発物を機内に持ち込み、爆破する計画をロンドンのMI5保安情報局(www.mi5.gov.uk/)とスコットランド・ヤードが未然に防いだ。スポーツドリンクのボトルに入れて、それをバカチョンカメラのフラッシュで起爆させる仕掛けだったという。

このテロ計画が実行された時の光景は『大西洋上を飛行中の数機が同時に爆発、後続する数機も束になってたて続けに爆発、計10台がコントロールを失って海上に落下、また不時着した機は数分で沈没……』。

これぞ大スペクタクル、世界中をアッと言わせるこれ見よがしの派手な効果を狙ったテロである。ここのところがイラクやアフガニスタンなどの紛争地で頻発するテロと基本的に異質だ。紛争地では勢力抗争の一環として市場、バス停、モスクなどを無差別に爆破するテロであり、日常化すると国際的な注意を引かない。レバノン情勢だって一ヶ月続くと、飽きがくる。イスラエルとヒズボラのコラムを続けているとアクセスが減るんだもん。

●イスラム系移民の子とコーランの檄
ロンドンとバーミングハムで摘発された22人はイスラム移民の2世だか3世
だ。パキスタン系20人と、バングラデッシュ、イランが一人ずつ、すべてイギリス国籍を持つ。さらにパキスタンのカラチでも逮捕者が出た。ロンドン地下鉄爆破もそうでしたが、なぜイスラム系の若者がテロに走るのか。イギリスにはインドや西インドからの移民が歴史的な関係があって非常に多いが、彼らの中からテロリストは生まれない。やはりイスラムに特徴がある。否定できない事実である。

なぜイギリス育ちのイスラム系若者の心がイスラム原理派に惹かれるのか、そういうテーマを研究する心理が流行しているが、どうも明確な説明が得られない。ありきたりの説明を要約すると:若者は出自のイスラム宗教・風習と慣れ親しんだ英国文化の葛藤に悩む。これはハシカのようで誰しも罹る一過性のもの。ただし中にはコーランの過激な部分に惹かれてジハードに参加し、テロ破壊に走る者がいる。ヒンズー教のインドやキリスト教の西インド諸島出身者にはそのようなジハード的思想がないので過激な社会的行動に進むことはない。

●暴徒とテロリストの区別
たしかに欧州にいる移民の若者は失業率が高く、将来に希望がもてない自暴自棄な者も多い。しかしテロ計画に関わるような人間は普段の態度がならず者では不適正である。9.11のように目的に合致した技能をもつインテリが合格タイプということになる。彼らはアメリカを標的にしたデッカイことを夢み、こつこつと計画を練る。東京地下鉄サリンでも実行犯はインテリ崩れだった。イスラムに特徴があることは否定できないがしかし、付和雷同型暴徒になるムスリム若者はまだ同情の余地があり、テロリストになるムスリム若者とは区別して考えるべきだろう。

旅行客はとんだ目に遭ったけれど、ヒースローは翌11日にはほぼ正常にもどり、欧州、米の各空港も一段落するという。この面ではストライキよりよほど回復が早く、客の不満も少ないのでした。

付記:液状爆発物は1987年の大韓航空爆破事件で、途中で降りた北朝鮮の工作員と金賢姫(キム・ヒョンヒ)が機内にウイスキーとして持ち込んだとされる。(了)



Pnorama Box制作委員会

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