● レバノンをこけにできなくなった安保理
遅まきながらアラブ連盟(22カ国)が「ものいい」をつけに代表を安保理に送り込み、ドラフト修正を迫りました。レバノンは頼りない棒読みのレバノン国連大使にかわってイスラエルのギレマン大使と渡り合える人物(ミトリ外相代行)を送り込んだ。安保理15カ国のメンバーになっているカタールが助っ人を得て、良いところを見せています。8日は安保理公開協議の実況を、丁々発止につられて最後まで見てしまった。
たとえばミトリ外相の2度の発言のあと、ギレマンが『ミトリ演説中一度もヒズボラに言及していない。イスラエル各地を砲撃するヒズボラが全く欠けている!』。言われて、あ、そうだ。ショックだったな。
協議の様相から感じ取れるのは、レバノン領土からイスラエル軍の撤退を決議案に盛り込むようになりそうだ。ブッシュがぴしゃりと撥ね付けたのは無作法でしたね、アラブ連盟の顰蹙をかいました。フランスは既に傾いた。はっきりしなかったロシアはレバノンに不利な決議に反対すると揺れた。英米がやすやす同調するとはおもえないが、かといって週末には採択しなければならずどういう文言になるか、即時撤退の「即時」をどう処理するか興味深い。項目一にある捕虜の交換は数の上からアンバランスでも、報復攻撃だってひどいアンバランスだから決議文に入れてもよさそうにおもう。
どっちにしても今週はイ軍とヒスボラが総力をあげて戦うことにかわりなく、具体的な停戦プログラムを盛り込んだ決議は8月中にできれば上々だろう。シニオラ首相は先月のローマ会議声明にある7ポイントの停戦案を復唱し、それをアラブ連盟も賛成して安保理に対案として出している。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/5256936.stm
ライス長官が出席し、G8で再確認した声明であるが、あの時点ではヒズボラ早期壊滅を当然の前提とする気楽さがあった。私だけじゃかったのです。
●やっと政府軍拡充に動き出したレバノン
すんなりイ軍を撤退して停戦が成立するような状況ではない今、やはり撤退は多国籍軍と交代に行うのが確実な順序である。2000年に撤退したあとをヒズボラが占拠したあのテツを踏んではならない。失敗多国籍軍にレバノン軍が加わった緩衝帯構想もよい。レバノン政府はやっとそのための予備軍を国軍に召集し、15000人を南部地域に展開する決定にこぎつけた。シニオラ首相がおこなった初めての有効な政策である。イスラエルは30年前からヒズボラ武装解除とレバノン政府軍の国境警備を要求してきたので、色にこそ出さないが内心驚喜しているのではないか。怪しげなヒズボラとの関係が不安だが、政府軍が充実することでレバノンにおけるヒズボラ天下がうんと弱まるのは確か。(了)