安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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レバノンをこけにした安保理ドラフト
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〈 Mon, 7 Aug 2006 〉


●レバノン決議、イスラエル有利のドラフト
米仏が合意して、というより議長国フランスがなんでもいいから早いとこ停戦にむけ採決したい焦りで妥協したのだろう、水のように薄まったレバノン決議案が採決されるはこびになりました。反対するのはイラン決議案のとき唯一の反対票を投じたカタール(中東を代表する立場)だけだろう。ドラフト(合意案)はブッシュが満足したイスラエル贔屓の内容だ。

『完全な敵対行為の停止』"full cessation of hostilities"といいながら、イスラエルにはヒズボラの攻撃に反撃する権利が与えられた。そのうえでドラフトは永久停戦にいたる長期的な問題解決に取り組むと付け加えて問題を先送りにしている。その間に市民がどんどん死んで行こうが、出来ない相談はあとまわし。それが国連の実情だ。ライス長官は持続する停戦への第一歩というが、イ軍の撤退や捕虜交換などヒズボラが要求する肝心な項目が無視された。一歩じゃレバノンは納得しません。

●疲れがみえるイスラエル政府
イスラエルはやっと国境から10キロ内を制圧したが、リタニ川まであと20キロもある。すでに戦闘は26日目、レバノンの死者は800人に達し、予想した落としどころだった3週間以内、死者500人というインカージョンの範囲を逸脱したが、ドラフトで勝利したイスラエルはいまのうちに総力をあげて攻撃する。といえども世論の高まりに逆らって一週間が限度だろう。実際イスラエル政府は頑強なヒズボラを相手に疲れが見えてきた。いずれ破壊した町や村、道路やインフラの補修再興というツケが回ってくる。戦後補償を世論がリードする時代である。ブッシュとライスはそういう先まで考えてイスラエルが不利にならないよう停戦に導く段階的な国連決議を模索している。

●イスラムに欠ける交渉力
イスラエルと近隣イスラム国との紛争で、いつも不満に思う事はイスラム側に和平交渉の戦略がない。憎しみを残して沈静化する顛末を繰り返してきた。このあたりは中国の底知れぬ権謀策術と生来異なる民族である。レバノンのシニオラ首相はストップ・キリングを復唱するばかりで、それじゃどうやって停戦に持ち込むか『ハウ』がスカッと欠けている。シニオラ首相はヒズボラリーダーのナスララ師と直談判できなく、試みようともしない。世論を納得させる技量もない。イスラエル非難の世論は市民の被害状況とガレキの市街を生々しく報道するメディアによるもので、レバノン政府を進んで支援する動きは中国でさえ控えているようだ。(了)



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