安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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カナ事件と24時間空爆停止
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〈 Mon, 31 Jul 2006 〉


●避難市民を殺傷したカナ爆撃
レバノン攻撃18日目の日曜日、アパートの地下室に、此処なら安心だろうと非難していた近隣の民間人約60人がイスラエル戦闘機の爆撃を受けて死亡した。犠牲者は例によって女性と子供が殆どという痛々しい惨事である。カナの町は国境から10キロくらいのところで、ここからヒスボラが頻繁にカチューシャ・ロケットを発射する。イスラエルは市民に数日前から避難勧告を出していた。しかし例によって退避できるものはいいが、貧しい市民は動けない。

そうと解っていてもイ空軍はヒズボラが発射する場所、しばしば町中のビルの上階から射ち出されるのでそのビルにレーダー誘導ミサイルを戦闘機から発射する。一発必中である。目標さえ誤らなければ誤爆はまずおこらない。カナンのアパートが標的だったことに間違いないが、夜あの地下に市民が大勢避難していたことは知らなかった。空爆から数時間して上階に貯蔵していたヒズボラの爆薬がビルを破壊した可能性が指摘されている。

●カナ爆撃の波紋
ベイルートでは怒った抗議の群衆が国連本部にガラスドアを打ち壊して乱入、放火は幸い消し止められ職員に被害はなかったが、国連を襲撃したのはイメージダウンだ。イスラエル非難の世論が割引されました。なぜアメリカ大使館に押し寄せなかったのか、レバノン軍が警護を厳しくしていたのだろう。襲撃された国連本部はデモが近づけないよういまレバノン軍が警備している。ガザの国連事務所も同日ハマスの狼藉を受けた。

オルメト首相はライス長官が到着する前に、エゲランド人道支援調整官が提案した72時間休戦を拒否、会談でも10日から2週間、ヒズボラ攻撃を続行すると譲らなかった。休戦を拒否したのはすでに避難のための回廊を設けてあるという理由からだ。これが全土にまんべんなくあればよいが、ベイルートを結んで数本しかなく、機能していない。またレバノン政府は危険地域の国民を組織的に移送できる体制にない。車の有る者が先を争って「回廊」にひしめき、一段落したいま、「回廊」を行く者は怪しまれ安全ではなくなった。このあたりをレバノン政府側とイスラエルがうまく連携できればよいのだが、傍観者の妄想だろうか。

●24時間空爆停止
オルメトは、レバノンのシニオラ首相が虐殺と呼ぶカナ事件に相当こたえたようだ。事件の調査と人道上の理由から24時間の空爆停止を米に伝えた。レバノン首相に会談をキャンセルされたライス長官はエルサレムに残ってオルメトと協議、国連が要請した72時間から24時間に、3日が2日になったけれど空爆停止はその成果と言える。と被害状況が明らかになってから15時間ほど経過していた。その間安保理ではイスラエルの国連大使が国益を最大限擁護しミゴトな演説を行ないました。この演説は下書きなし、すわった眼光はいつものインタビューと一転して凄みがあったなあ。歴史と文化、平和なレバノン希求を取り混ぜながらモンスターになったヒズボラをあぶり出し、印象的な言葉がいろいろあり要約難しいが、へーッとおもった弁術:被害者へ哀悼をながながと述べ、被せるように「イスラエル市民を無差別に殺害するヒズボラは被害者に謝った事はない」と付けくわえた。意表をつかれました。

10年前、おこったカナ空爆による多くの市民死傷事件はクリントンの仲介で停戦につながった。けれど断続的なテロが止まず今回の報復に至っ たわけで、今回イスラエルが「即時停戦」より「維持可能な停戦」にこ だわる理由はそこにある。とまれこの事件がなんらかの停戦に繋がる可 能性は充分ある。但しヒズボラの武装解除ができるか、疑問である。 (了)



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