安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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INCURSIONとINVASION
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〈 Sun, 23 Jul 2006 〉


●インカージョンとインヴェイジョン
イスラエルはブルドーを先頭に戦車を連ねて地上軍がレバノン国境を越えた。2キロのところにある高地、ヒズボラの基地村を制圧した。どのくらい領内深くに進むか、ヒズボラ拠点のあるベイルート南部までたかが100キロくらいである。やる気があれば可能だがイスラエル軍にその意図はない。今日もヒズボラは国境に近い場所からイスラエル側に100発ほどのカチューシャを撃ちこんだが、それらヒズボラの発射地点のある国境近くの村を制圧するのが地上軍の目的である。

イスラエルはこの地上軍のレバノン領内展開をINCURSIONと呼び、INVASION ではないという。インカージョンもインヴェイジョンも英和辞典では同じ侵略・侵入だが、小規模部隊で占領の意図がない国境侵犯をインカージョンという。イスラエルの言い分を鵜呑みにするのではないが、ヒズボラのロケット発射地域を制圧するのが目的だから20キロまでの侵攻と考えて良い。

●最強の米・イスラエル同盟
ブッシュが米国民向けのラジオ演説で持論をますます確かにし、米とイスラエルの絆はいまが歴史上最強だろう。ヒズボラを支援するイランとシリアを名指しで非難、イスラエルの敵は米と共通の敵である。北朝鮮は日米共同の敵なんちゅうのはピーナツですな。ブレアとブッシュのラップ会話にある通り、ブッシュは停戦に興味はない。ヒズボラを根絶しないで停戦したってすぐ破れることはパレスチナ武装派との停戦でも、今日破れたソマリア停戦でもお決まりコースなのです。ブッシュはヒズボラ粉砕を具体的にサポートしてやりたいくらいだろう。

●攻撃の聖域と退去周知

空爆の場合、ベイルート南部のヒズボラ拠点のあるシーア地区や南部の村への空爆は前もって住民の退去をラジオや空からビラでイ軍は勧告している。といっても逃げるのはそう簡単ではなく、イ軍は南部から自動車でシリアに通じる道路を一本しか残さなかったため渋滞がヒドイ。レバノン民間人の金持ちはホテルに、一般人は学校や公園、公民館、特設避難キャンプへと逃げられる人はいいが、安全な非難場所が近くになかったり、家庭の事情ですぐには動けない人がいっぱいいるわけで、10日目の犠牲者は300人、うち子供が約半数ちかくを占める。先のコラムで、犠牲者が500人に達する今月末ごろイ軍の攻撃がなか休みすると書いた。そういう展開におもえる。

イ軍は国境沿いの村から順に一軒一軒シラミツブシに調べ上げるのだが、米軍はイラクで同じ掃討作戦をスンニの都市でやってきたので、イスラエルにとやかく言えたギリではあるまい。しかもイスラエルはシラミ潰しにあたって、国境から20キロ以内に残っているレバノン民間人にたいして退去するようビラばかりでなく、電話、携帯メッセージまで使って周知に努力しているのである。20キロ以内にも学校や外国救援組織が活動する聖域がある。こういうことは反イスラエルのメディアは伝えないので書いておきたい。もうひとつ、空爆にはいい加減なパイロットが撃ちまくったり、的外れがつきまとうことも承知しておこう。(了)



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