安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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目論見が狂った北朝鮮
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〈 Sun, 16 Jul 2006 〉


●全会一致がものをいう国連安保理の対北決議
国連安保理が北朝鮮への制裁決議を理事国15カ国の全会一致で採択した。武力行使を含む経済制裁の根拠となる国連憲章7章に言及せず、したがって経済制裁の具体的な措置はないが、北朝鮮にはWMDに結びつく物資の輸出入を防ぐよう国連加盟各国に求めている。ということはその金の流れを阻止し、発覚すれば口座を凍結する米の現行金融制裁措置を安保理が認めたようなもので、「「制裁決議」と呼ぶべきものです。米英の国連大使は拘束力のある決議と述べている。

最終決議案は中露の棄権に考慮してトーンダウンされたが、それでも中露が望んだ単なる非難決議より厳しい内容だった。全文を読んでいないのですが、ダイジェストでは緊張を生むような行動(ミサイル発射)を慎むよう特に強調している、つまり『2度とミサイルを射つんじゃないぞ、また発射すれば次は第7章だからね』という意味が込められているのです。

●日本国連外交の稀に見る成功
採択にいたるまで10日、合意点をさぐる駆け引きだったがG8サミット直前に決着したのは、北のミサイル発射後ただちに日本が安保理に提案したから間に合ったようなものだ。こういう迅速な対応が出来る外務省だったのですね。今回にかぎりなぜそんな早業ができたのか、次期総裁最有力の安倍さんに迎合したとか、麻生外相の決断力とか、ボルトンの差し金とか、どれも当たっているようで、それらの相乗効果が働いたのだろう。大島賢三国連大使は意外にしぶとく交渉上手で幸いでした。ほかに二つの幸いがある。北の国連大使は国連仲間から毛虫のように嫌われていて同情を得られなかったことと、議定書作りの名手イギリスが理事国のすべてに受け入れられる文案を書いてくれたことである。

今回の北朝鮮ミサイル発射実験の目的はミステリーであるが、安保理全会一致という結果は全く予想外だったハズだ。中国とロシアが北に敵対する決議に同意すると判っていたら金正日はミサイルを発射しない。北は、中国からも韓国からも離れた領海内にちょこんと落として問題化を避けたつもりだったが、薮を突いてヘビを出してしまった。

●中国、金正日を冷遇しはじめる
先日、中国の武大偉外務次官は2国間協議に応じても良いとするブッシュのメッセージ携えて平壌を訪問、金正日は米がすり寄ってきたと、鼻高々だったと伝えられる(USA Today)。もっとも金正日としては国内の危機感が高まれば内紛解消・挙国一致・体制維持に繋がるので痛くも痒くもない。しかしまさかそれが目的ではないだろう。中国は生意気になりすぎた北朝鮮に胡錦濤は苛立っている。金正日に冷淡になりはじめた。これから中朝関係に翳りがでるおもしろい展開がみられます。

●安保理決議で名を上げた日本、損した韓国
一方中国は、米と連携して国連決議に功のあった日本を気分次第で侮れなくなった。中日関係の修復にあちらから働きかける風向きに変わりつつある。安保理決議でいちばん損をしたのは、対北宥和政策という無策の盧武鉉を戴く韓国である。日本を騒ぎすぎると託宣をくだしたノムヒョンの無能ぶりがあからさまになり、さらに南北閣僚会議では北にすっかりナメられ押しまくられて良いところがなかった。(了)



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