安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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非公式米朝対話につり込んだ中国の新手
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〈 Mon, 10 Jul 2006 〉


●実証されなかったテポドンの性能
北朝鮮がミサイルを発射したニュースを夏休みモードの真っ最中、ヨテボリで聞くものの、スウェーデンTVなのでもうひとつ要領を得ない。ノルウェー、スウエーデン、デンマークの3国は互いに言葉が通じるというが、それはネイティブならのことで、習い覚えたわたしみたいな外国人には半分以上わからない。

テポドン一発を含む七つのミサイルが東海/日本海に落ちたという。東海と日本海をスウェーデン国営1チャンネルのTVニュースで併記して言う所を見ると、韓国の要求する呼称・東海(トンヘ)が国際的に浸透してきたようだ。連日30度の休みモードでしたからそれくらいの感慨しかうかばなかった。

●みえない北の目的
で、昨日遅く帰って一週間の世事をざっと整理してみて北朝鮮のこのミサイル発射実験は一体全体何を目的にしたのか、合理的に納得できる解釈はムリだ。いかにもそれらしい解釈;米との対話が目的、中東やアフリカへのミサイル売り込み等の説明は素人目にも破綻が多い。対話が目的なら6カ国協議に復帰すればよいので、性能が実証されないロケットでは無意味である。

世界の関心事は、北朝鮮が人工衛星の試射をエクスキューズに打ち上げる長距離のテポドンにあったわけで、これがハワイを超えるかがポイントでした。それがどうしたことか発射後40秒で分解して北の経済水域に落ちた。計画通り落としたのなら性能実験にはならない。日本をまたいでハワイに届かない太平洋にうまく落とせたら、米の報復を反射的に招くことはなく、しかも北の予告通り世界をあっと言わせる脅威である。合理的に考えるなら金正日の計画は日本近海太平洋であって然るべきなのだが、性能の面で自信が無かったのかもしれず、日米を相手に綱渡りをする度胸がなかったと思われる。

●非公式6カ国協議という新手
もうひとつ、経済水域内実験という条件で中露の黙認を得られたと考えると納得できる。米のクリストファー・ヒル代表は『中国も怒っている』と、毎度ながら中国の建前にまんまとだまされ、非公式6カ国協議の開催に同意、その席上で北との直接対話を非公式という呼び方で応じるまで折れてしまった。こうしてみると、北は中国に自分たちが有利に立ち回ってもらうため、材料提供にミサイルを発射してみせたとおもえてくる。通常ミサイルは何発射とうが技術的に新味はなく、軍事的にも脅威でないが膠着時様態を脱する材料にはなる。

国連安保理に日本が米に替わって提案し、その後7カ国の共同提案となった北制裁決議案の採決が早ければ10日の今日にも行われる。反対に回るロシア、中国とその影響力下にあるアフリカの開発国と拮抗しているが、中露は拒否権を行使するのをためらっているようで、可決される確立は高い。だが、経済制裁は今以上に増えないだろう。逆に、非公式6カ国協議という珍妙な中国の新手に乗ってしまったブッシュは、北に対する金融制裁を一部解除するのではと懸念される。(了)



Pnorama Box制作委員会

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