● 原発廃炉から新設へ方向転換した欧米
もう10年ぐらい前、環境に配慮してドイツは原発をこれ以上建設しない方針を決めた。老朽化する原発を順次閉鎖処分にしてあと20数年で全部なくすという方針、それまでに代替燃料を開発できると予測していたのです。楽観的でした。その後、ロシアの石油ガス生産が急速に伸び、資源開発も進んだのでシュレーダーがうまく立ち回ってプーチンからガスパイプをバルト海に敷設し、ロシアから直接ドイツに引き込む計画をまとめあげた。で、この工事は既に始まっている。
それでも昨冬のウクライナに象徴されるように、ロシアにエネルギーを頼ることは甚だ心許ない。で、ドイツもスウェーデンやイギリスと同じく、原発新設に方向転換に傾いた。また多くの欧米原発は同時的に2030年頃に老朽化を迎える。原発というのは巨大ダムを作るぐらいに長くかかり、本格稼働まで早くて10年かかるといわれるので、建設地確保はいま急がれる難問である。
アメリカについては、放射能を含む蒸気がもやもや立ち上ったスリーマイルの事故が思い出される。米ではあの事故以来30年ちかく、原発の新建設を凍結してきた。理由は安全面もあるが、環境に照らして放射能廃棄物の処理に金がかかりすぎることによる。凍結したため米はこの方面で技術革新がゼロになっていたのです。
●そこで日本の登場
そこで、日本のプラントメーカーが登場する。米の商業電力会社NRGエナジーは日立製作所とGEに共同で原発を建設するよう注文した。52億ドル,約6000億円の注文だ。GEと半々の仕事としても3000億である。 NRGの計画では最終的に沸騰型軽水炉(ABWR)を2基、出力1万500メガワットをテキサスに建設する。総事業費160億ドル、約2兆円というこの事業を日立とGEが請け負う。特に沸騰水型は米でおこなわれておらず、いまテキサスにあるのはウエスチングハウスが作った加圧水型(PWR)で、これを日本のABWRに新しく切り替えることになった。建設は2009年に始まり、2014年に稼働する。
日立は九州の岡野バルブ製造組んで原子炉の心臓部を担当し、GEは核燃料調達を米政府と交渉する役回りである。米政府に信頼されている日本企業だからGEもウランを取得できるのです。中国はパキスタンの原発建設を受注しすでに着手したが、米での受注は逆立ちしてもできっこない。
こういう新設計画が米ではあと60基とも200基とも言われる。コワイ話でもあり、メーカーにとってはオイシイ話であるが、日立が海外で原発を作るのは始めてというではないか、算盤はじいて喜んでいる場合ではないのでした。今後の受注には東芝や三菱重工が控えているのですから、失敗のないよう念には念を入れて願います。東芝はブリティッシュ核燃料社と結ぶウエスチングハウスを2月に買収し、原発グローバルビジネスに挑戦する。(了)