安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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中国の恩人ゼーリックの功罪
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〈 2006年 6月 21日 水曜日 〉


● 夢破れた優等生ゼーリック
ロバート・ゼーリック(Robert B. Zoellick)米国務副長官がめでたく16ヶ月で辞任の運びとなりました。ホワイトハウスの切れ者といわれるが、頭がシャープだから良いってものではない。前任アーミテージはそれほど切れ者にみえないけれど方向性があった。ゼーリックは財政畑出身の実務官僚である。そのうえ個人的ヒガミのせいか、優等生特有のイヤミがある。

たとえば先週金曜日、辞任の弁をニュースでこんな風に語っている。『ライス長官の出発にあたり、請われてチーム作りを最優先した。ライス長官は活発な活動が出来るようになり・・・わたしが着手した仕事はやり遂げた』。と、ライスの巣立ちを見届けたとでもいいたそうな口吻だ。スノー財務長官の後任を自負していたが、旧友ライスの推薦は貰えず、ポールソンに持っていかれた。その前に、WB総裁候補にあがったが、このときライスに国務省副長官にと頼まれ、ウルフォヴィッツにWB総裁職を持ち去られた。

●旧友ライスに飼い殺しされたゼーリック
しかも、ライスからは対中国政策、スーダン/ダルフール調停などのミッションを与えられ、国務省での日々の情報やホワイトハウスの政策から距離をおく存在になった不満がある。もとはといえばゼーリックがベーカー国務長官のトップアドバイザーだった頃、ライスやニコラス・バーンズはNSCの職員だったにすぎない。胡錦濤の米訪問後に辞任する意向だったのが、財務長官のポストが空きそうなので居残っていたのだが、後輩だったライス長官に飼い殺しにされたといえる。

すべての夢がやぶれて、ポールソンが会長だったゴールドマン・サックス社の国際部経営担当副会長に転身する。この金融・証券大手は中国投資に深く関わっているからゼーリック氏の中国人脈に期待してのこと。民間人になったといえゼーリック氏はいまでも中国では恩人、超VIPである。氏が押し進めたResponsible Stakeholder「責任ある利害共有者」は米の意図がどうであれ、中国では米からのエール、応援スローガンと受け取られている。それだけにゼーリックを失った中国外交部はショックだろう。

ところでゼーリックはブッシュ一期政権で通商代表としてアメリカ産牛肉の再輸入を迫り、日本は非科学的と講義した。あの交渉態度がその後の進展を遅らせた。決して交渉上手ではない。中国では饗応と甘言にしてやられた組だ。さて副長官ポスト後任はライス長官が決めるだろう。どっちにしろ中国の膨張政策に口を慎むゼーリック流外交は終わった。(了)



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