安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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ドタキャンされた南北鉄道のテスト運行
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〈 2006年 5月 25日 木曜日 〉


●取られ損の経済支援
朝鮮国が韓国と北朝鮮に別れる前は、わざわざ南北鉄道とは呼ばなかった38度線を跨ぐ2本の鉄道、西の黄海(韓国では西海/ソヘ)側を走る京義(キョンイ)線と東の日本海側を入る東海(トンヘ)線のことである。半島動乱から南北にわかれて戦争を始めて以来だから55年ぶりに再開される、いわば南北市民交流ことはじめの祝い事だったのが、前日に北側から中止通告。

連結の話は2000年の南北首脳会談で合意し、見返りに北が要求する経済支援を気前良く実施してきた韓国は、再開に楽観的になっていた。北側の鉄道整備はもうそっくり韓国の財政支援で完成したんだもの。それなのに一般市民はショックだろう。ウリもハンナラも関係なく、特に親北反米の韓国人は後ろ足で欠けられた砂が口に入った感じだろう。

●韓国側の読みちがい
もちろんわたしも驚いたが、一面とても平然でありますな。北の同胞を知った気でいる韓国の温風・宥和政策と盛り上がりムードに、冷や水を浴びせたドタキャンは、失礼とか遺憾とか言うより、北の本音を読み間違った勉強不足を嘆くべき。ということがわかった。両国軍の実務者協議で安全運行の軍事保障がまったく協議できていなかったのだ。合意がなければ試運転に応じない、と北が主張すれば、あのドクトリン体制がドタキャンするのはまことに道理のかなった決定なのである。いやというほど経験済みではないか。

では、というので韓国は乗客名簿を提出すると伝えたが、そんな問題じゃないよね。北がアジェンダに持ち出した西海グレーゾーンの交渉に応じなかったことが決裂の主要原因です。カニ漁や漁獲で例年問題になる「北方限界線/NLL」は休戦後に米主導の国連軍決めた境界であり、韓国の一存ではまずいにしても、わたしら、地図描きをしている者の感想としては、北の主張する海上境界線は国際通念にかなったものである。話し合う余地は多いにある。

さて中止この結果、6月末の温風の主・金大中が京義線経由で平壌入りする計画は怪しくなりました。ダメときまったら、韓国次期政権は対北支援を減らすだろう。

●中止は金正日がリード
国際礼儀上無粋なドタキャンだが、原因の大部分は韓国政府の目が節穴のゆえにおこったこと、すみませんが同情する余地はあまりない。ところで、北のキャンセル理由がふるっている。『韓国内の親米極右勢力による社会不安』という。なんのことか一瞬キョトンとしちゃいます。でもこれをマジに議論している北朝鮮軍部上層部の存在があり、金正日も近頃各地の軍組織を足しげく訪問しているというから、国家の安寧に関わる金正日総書記の決断であったと推測される。

●京義線と東海線
なお、京義線は27キロ、東海線は26キロ、どちらもどうせやるなら新幹線クラスで10分で結べば良いものを、1時間半のデイーゼルで走る。東海線は金剛山への観光用、京義線は韓国企業が進出しているケソンへ、資材とビジネス用である。どちらにも巨額を投資しているのが現代グループである。(了)



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