安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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米と軍備競争に挑むプーチン(3)
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〈 2006年 5月 14日 日曜日 〉


●少数民族人口増と、外国人排斥
前回より続きです。ロシアの少子化でもう一つ付け加えておきたいことがある。ロシアと端的に言うが、正式にはロシア連邦であり、旧ソヴィエト連邦から独立できなかった少数民族の国を多数かかえている。チェチェンや北オセチア、タゲスタンとかイングーシといった独立運動のある共和国の名は耳にしたことがあるだろう。南部管区に多いこれら少数民族の国では人口が増えているのです。

で、このこともプーチンにとっては脅威にちがいない。プーチンは昨年、連邦を7管区に分け、それぞれにプーチンが指名した知事を置いて中央集権を強めた。共産主義への回帰現象のひとつです。

増えているからという訳ではないが、モスクワやペテルスブルグの都会ではこれら少数民族への迫害が以前からあった。それが最近、スキンヘッドのような国粋グループが理由なく外国人を襲う事件が相次いでいる。ロシアは昔からアフリカ、中東、中国など、途上国の留学生を受け入れて大事にしてきたが、近頃彼ら留学生が襲われる事件が多い。日本人学生が暴力を受けた事件もいくつかある。ロシア人以外の増加を望まないプーチンは外国人排斥の風潮に触れず、海外のロシア人帰還を促進することを奨励している。

●プーチンの思想は、軍事力万能主義
6年前、エリツィン大統領の推薦でプーチンが就任したころ、ブッシュはプーチンを身内の友人のように気に入る勘違いをしでかした。ブッシュだけではない、当のロシア人だってまさか民主化より独裁を強める人間とは夢にもおもわなかっただろう。プーチンはロシアの軍備を大々的に拡張することを年次教書演説で大々的に宣言した。中国が軍備増強の言い訳に終始するのとエライ違いです。

売り言葉に買い言葉というか、ライス長官には民主化後退、人権問題を非難され、チェイニー幅大統領がリトアニアで同じ非難に加えてオイル/ガス資源を隣国に政治的脅しに使っていると発言したのにプーチンが対決姿勢をあらわに反撥した。冷戦再発である。『ロシアが非難されるのは軍事に劣るからで、外圧を受けないために軍を強くしなければならない。アメリカはロシアの25倍の軍事費を使っている。我々は追いつかねばならない。』なんて、やみくもな考え方はイラン、中国、北朝鮮と同じだわな。

●共産時代に回帰したロシア
ロシアのエネルギー輸出収入はこの数ヶ月歳出を上回っており、これを軍需産業につぎ込むとどうなるか。すでに、始まっているのですが、国営軍需産業が活発になると官僚が息を吹き返し、共産主義時代の社会様相に似てくる。国防大臣が権力の2番手を確保し、ああ、それであの年次演説の途中、イワノフ国防大臣がサクラになって『愛!』と叫んだのですね。役人たちに汚職のウマミが倍増する。軍人が大事にされ恩給も元通り支給される。1年ぐらい前から、共産時代懐古のデモがすっかりなくなったので察しがつくように、プーチン政権の現況は、制度的に一党独裁ではないが、生活風景は共産時代である。プーチンがたったひとつ絶対出来ないことが汚職摘発で、これも共産時代らしいではないか。

ここで一歩下がってロシアの軍備狂奔を眺めるに、欧州、米とも反応が実にのどかである。殆ど無視だ。ソ連は軍備競争に金をつぎ込んだすえ疲弊し崩壊した。今度もドブに棄てるようなもので、古くなって捨て場に困る戦車や原潜、戦闘機の山を築くだけでしょう。米のような実戦で証明済みのハイテク武器は逆立ちしてもできっこない。ロシアの核と荒っぽいミサイルはもう200パーセント外圧を撥ね付ける脅威である。わかってないのね、プーチンさん。(了)



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