安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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生めよ増やせよ、報奨金を弾むプーチン(2)
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〈 2006年 5月 13日 土曜日 〉


●みたことがないロシア製品
例えばあなたの回りを見渡して、ロシア製品がありますか?職場でも家庭でもメイド・イン・ロシアが見つからないでしょう。日本製、アメリカ製、英仏独でも製造国は中国か、でなければどこかアジアの国である。家電製品や消費物資でロシアは国際市場を持っていない。昔はヴォルガを個人輸入したり、ラーダを西側にも輸出していたが、トンとお目にかからなくなりました。家電製品では以前からハンガリー、ポーランド、チェコの製品が8割を占め、いまでは日本製高級品もあるが、安い中国、韓国製品がハバを利かせている。旅客機のイリューシンはもはやCIS諸国や中国も買わない。かといって工業生産も奮わない。

そんな発展停止国ロシアのプーチンが強気なのは、ひとえに石油ガスの高騰のおかげである。そして民間に払い下げた石油企業のユコスが強大になりすぎ、これを潰してプーチンの管理下に置いたのは、そうでもしなければユコス社がロシア政府を動かすようになるからに他ならない。

●プーチンの人権無視と愛の関係
さて、石油ガスで潤い、ますます潤いつつある財力を背景に、プーチンはまずこのお金を国営軍需産業につぎ込み、軍備拡大を目指す。このテーマは次回に譲るとして、ロシア人口減対策の具体的措置に財源の一部を当てる、つまりベビーを生めば育児費を弾みますというわけ。二人目に100万円の報奨金ですからね。報奨金と育児費支援ばかり言っては即物的だとおもったか、プーチンは演説で「いま最も重要なこと、それは何だとおもいますか?」といって議場をねめ回すと……議場から一声『愛!』と叫んだ男がいる。サクラは国防大臣イワノフ。このシーン何度も放映しているのですが、そこでおもむろにプーチンは「国防総省は何が重要かよく承知している。我々は愛について、婦人について子供について家庭について語ろうではないか。ロシアが現在直面している切実な問題は、人口である」と切りこむのでありました。

欧米TVがこの場所を好んで繰り返すのは多分に茶化しているからで、人権になおざりなロシア政府が愛だとはちゃんちゃらおかしい。プーチンはつづけて「報奨金育児支援金は自由につかってよろしい。家を建てたり、車を買ったり、教育費にまわしたり、将来のため貯金するのも良い」なんて愛よりもっと現実的メリットに力点をおいてKGB的に釣るのです。

●少子化は先進国共通の悩み
少子化はストレス先進国に共通の減少で、この面ではロシア人も先進国、韓国も仲間入りした。しかしアメリカは伸びているではないか、といわれるがそれはウソでヒスパニック、アジア、黒人の人口が増えているから結果として増加しているが、ホワイトだけなら減っている。西欧、北欧もこの傾向は同じで移民系の人口が増えているため国民総数が維持されているにすぎない。オスロの人口は増えているが、多産の移民系が急増しているためで、ネイティブ・ノルウェー人の人口はずっと減ってきているのです。これグラフを見ると驚愕ものですぞ。(次回は軍備拡張と新米ロ冷戦について)
(了)



Pnorama Box制作委員会

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