安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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生めよ増やせよ、報奨金を弾むプーチン
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〈 Thu, 11 May 2006 〉


● 国家の存亡は出産率にかかっている
米の年頭教書は欠かさず自分でライブを見て聞いて、印象を書いてきたが、ロシア大統領プーチンの年次教書を取り上げないというのは片手落ちだったかな。ロシアの場合は、年明け新しいうちにしないで時期が一定していない。今年の教書演説5月10日、気候もよろしい頃。したがって年頭じゃなく年次教書というのですが、プーチンに限らずロシア人の演説は長い。ブッシュの年頭教書の倍近く長くなる。今年の特徴は「経済」の言葉が増えた割には昨年の経済国家プロジェクトはどこへいったか、完全に抜け落ち、「ロシア」や「国家」を乱発するのは毎度だが「発展」を多用する割にはロシアの将来像を描かなかった。

年次教書、今年いちばんの特徴は、少子化を国家の存亡に関わる緊急最重要課題として、プーチン自ら訴えたこと。いささか驚きました。昨年まで「子供、子供たち」という言葉が年次教書にひとつもなかったのに、モスコウタイムスによれば、今年25回もこの単語を使ったという。

●ロシア人が子供を産まないわけ
ロシアの人口は日本より1600万人ほど多いだけ、そこで毎年70万人も減少しているとなれば、少子化で騒ぐ日本人がジョーダンに見えてくる。日本では平成18年にピークに達し、それから減少過程にはいるが平成25年に現在の人口まで回復するという国立人口問題研究所の予測である。わたしは半分くらいに減れば、日本は住みやすい国になるだろうとマジメに考えているくらいだから不満。でもロシアの「毎年70万減り」というのはさすがのプーチンも鳥肌がたつでしょうな。

さて、この問題はこの半年くらいロシアのメディアで警笛キャンペーンをしています。私が読めるのはタスとプラウダ、モスコウタイムスの英語版だけですが、キャンペーンに市民の反応がない。これって、ふしぎでもなんでもない。男も女もウォッカとタバコ漬け、ベビーを育てるより孤児院に棄てるママが特に異常でもないロシアである。孤児の数20万人。そこへもってきて自殺率は世界最高。ロシアなんて石油がなければいまごろは10ぐらいの分裂国家になっているだろう。

●札束でベビーが得られるか?
プーチンの生めよ増やせよ措置は、石油ガスで潤う資金を乳幼児のいる家庭にまわす。一人目は18ヶ月まで月々700Rから1500Rに倍増、二人目なら4000Rを、孤児を引き取る家庭には8000R支給する。これって少しは効くかもかもしれないが、それより市民としては「仕事くれ、賃金あげろ」のほうが切実だろう。

いま、ロシアの取り柄は石油・ガス資源で経済が保たれているだけ、宇宙と軍事産業の遺産を維持しているが、新しい産業はゼロである。発展途上国はおろかはっきり言えば発展停止国である。次回に続けます。
(了)



Pnorama Box制作委員会

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